JRは再編されるべき? 「612億円」の赤字が浮き彫りにするJR各社の格差──“セクショナリズム”打破のカギとは

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JR発足から38年。分割民営化によって露呈した地域間格差と制度疲労をどう克服するか。8400億円超の黒字と612億円の赤字が同居するJR7社体制の限界を前に、国主導による再編の是非と持株会社設立の現実性を問う。

未採算3社が抱える課題と展望

2003年7月7日に鹿児島本線に開業した千早駅。JR九州も同駅周辺で不動産開発を手掛ける。2027年には千早駅-箱崎駅間で新駅開業を予定する(画像:大塚良治)
2003年7月7日に鹿児島本線に開業した千早駅。JR九州も同駅周辺で不動産開発を手掛ける。2027年には千早駅-箱崎駅間で新駅開業を予定する(画像:大塚良治)

 JRグループ以外の鉄道事業者との経営統合と並行して、JR各社の経営統合も検討すべきだ。その際は、メリットとデメリットを冷静に評価し、デメリットを克服する工夫が求められる。

 まず、JR九州を例に挙げる。同社は営業収益に占める非鉄道事業の割合が高い。初代社長の石井幸孝氏は

「JR九州は企業ブランドは鉄道事業であるが、実際の企業構造は不動産開発事業である」

と述べている(石井幸孝『国鉄―「日本最大の企業」の栄光と崩壊』)。JR九州は不動産事業で実績を積み上げてきた。本州3社とJR九州の不動産事業が統合されれば、より大規模な事業展開が可能になると考えられる。また、JR各社の経営統合が実現すれば、整備新幹線の未着工区間における選択肢も増やせる。

 経営統合を進めるうえで最大の課題は、未上場のJR北海道、JR四国、JR貨物が不採算であることだ。特にJR貨物については、ACに基づく線路使用料が、貨物列車の走行によって旅客会社に発生する費用を全くカバーしていないとの指摘がある。

・ACに基づく線路使用料
・旅客会社が貨物列車走行にともない負担する費用

の差額は、旅客会社からJR貨物への事実上の「贈与」にあたると考えられる。だが、仮にJR旅客会社とJR貨物が経営統合すれば、この差額は

「内部補助」

となる。筆者は、JR貨物が上場する際にはACルールの見直しや撤廃が高い可能性があると考えている。なぜなら、線路使用料の収受は外部取引に該当するからだ。経営統合が実現すれば、線路使用料の問題は企業グループ内の課題となり、JRグループ全体として鉄道貨物の持続支援が可能になる。

 このようにJRグループの経営統合には多くのメリットがあるが、単純な経営統合では上場JR4社の企業価値が低下する可能性もある。

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