トヨタ新車、人気モデルの受注停止続く――「お金があっても買えない」理由

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2025年、トヨタの人気車種は半年~1年先まで納期が延び、中古車価格が新車を上回るケースも出ている。営業利益2兆円を維持する一方、国内市場では供給難が続き、カーシェアやサブスクなど所有から利用へのシフトが加速。国内外の需給バランスが今後の自動車市場を左右する注目点となっている。

受注停止の長期化

トヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事)
トヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事)

 2025年現在、トヨタの人気スポーツタイプ多目的車(SUV)「ハリアー」やコンパクトカー「ヤリス」、ミニバン「アルファード」などでは、新規受注が長期にわたり停止している。ディーラーに問い合わせても、納期が半年から1年先と案内されることは珍しくなく、注文しても正確な納車時期を予測できない状況が続いている。この影響で消費者の間にはお金があってもクルマが買えないという声が広がり、購入意欲に影を落としている。

 トヨタの供給制限の背景には、一時的な部品不足を超えた複雑な課題がある。まず、世界的な半導体不足は依然として解消されておらず、電気自動車(EV)や先進運転支援システム(ADAS)の普及にともない、自動車1台あたりの半導体使用量は増加している。電子制御部品をめぐる競争は激化しており、国内外の生産計画に影響を与えている。

 加えて、部品価格や人件費の上昇もメーカーにとって大きな負担となっている。国内生産では円安の影響も重なり、原材料や物流コストが利益を圧迫する要因となっている。また、トヨタが長年磨いてきたジャスト・イン・タイム生産方式は、平時には効率的だが、海外工場の生産遅延や部品調達の難航が発生すると、国内生産にも即座に影響が及ぶ弱点がある。こうした状況は、消費者だけでなくディーラーにとっても対応の難しさを増しており、即納枠の確保や顧客への説明負荷といった現場の課題を顕在化させている。

 さらに、都市部と地方では納期や入手難易度に差が生じやすく、地域によって消費者が受ける影響にもばらつきが出ている。こうした長期的な受注停止は、単なる供給遅延ではなく、トヨタの生産・供給体制や国際的な物流網の複雑さが露呈した結果であることを理解しておく必要がある。

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