海外で普及する「キャップレス給油口」、果たして日本で根付くのか? その障壁とは何か

キーワード :
,
セルフ給油が一般化する日本市場で、キャップレス給油口の普及は限定的だ。北米・欧州では年率4~7%成長、2033年には23億ドル市場に達する見込みで、利便性とVOC削減効果が注目される。

キャップレス給油口の利便性

セルフ給油をおこなう男性(画像:写真AC)
セルフ給油をおこなう男性(画像:写真AC)

 国内でセルフ給油が一般化するなか、一部車種で「キャップレス給油口」が採用されている。給油の利便性を高めるこの仕組みは、2008年~2009年にフォードが欧米で「イージーフューエルシステム」として実用化した。

 従来のネジ式燃料キャップを廃し、給油ノズルを差し込むだけで給油できる点が特徴だ。給油口内部にはフラップ状の蓋が設けられ、ノズルを挿入するとスプリングで開き、抜くと自動的に密閉される構造となっている。

 国内では2015(平成27)年にホンダ「レジェンド」が初採用し、2016年には日産「セレナ」が豊田合成製キャップレス給油口を搭載した。セレナでは「手が汚れず給油でき、キャップの閉め忘れや置き忘れのリスクも解消される」として注目を集めた。

 環境面でもメリットがある。従来のキャップ式では、給油時にガソリンが揮発し「ガソリンベーパー」として大気中に放出される。このガソリンベーパーは揮発性有機化合物(VOC)に分類され、光化学スモッグや健康被害の原因となる可能性が指摘されてきた。日本では2006年の改正大気汚染防止法によりVOC排出規制が導入されているが、国内VOC排出の約10%はガソリンスタンド由来とされる。キャップレス給油口は構造上、密閉性が高く、ガソリンベーパーの蒸散を抑制できる。

 こうした利便性と環境性能が評価され、欧米ではフォードやGM(キャデラック、シボレー、GMC)の量販モデルを中心に採用が広がっている。今後、日本国内での普及も注目される段階にある。

全てのコメントを見る