JRは再編されるべき? 「612億円」の赤字が浮き彫りにするJR各社の格差──“セクショナリズム”打破のカギとは
アボイダブル制度の真意

国鉄の分割民営化によって、地域別・機能別にJR7社が設立された。この点について、JRの社長経験者はマスメディアのインタビューで各社間に競争意識が芽生えることを期待していたと語っていた。実際に各社は競争により発展を目指し、その結果として魅力的なサービスが生まれた側面もある(『毎日新聞』2017年3月31日付け)。
国は、JR7社を設立する際に、各社間の格差を縮小するため、いくつかの制度的措置を講じた。例えば、JR北海道・四国・九州のいわゆる三島会社に対しては、経営安定基金を設けた。また、JR貨物が旅客会社に支払う線路使用料については、「アボイダブルコスト(AC)」の考え方を基に算定する仕組みを導入した。これは、事業・活動を行わなければ発生しないコストを指す。
さらに、本州3社(東日本・東海・西日本)が新幹線鉄道保有機構に支払うリース料については、各新幹線の収益に応じて金額を設定する方式が採られた。これにより、再調達価額に基づくリース料と比べて、JR東海は2200億円の負担増となった。一方で、JR東日本は1800億円、JR西日本は400億円の負担減となった。東海の負担増によって得られた財源が、東日本と西日本の負担減に充てられたかたちである(舘沢貢次『総点検 JRという「株式会社」の真実』こう書房、1992年)。
JR東海の第2代社長を務めた故・葛西敬之氏は、保有機構について次のように述べている。やや長くなるが引用する。
「保有機構は東海道、山陽、東北・上越新幹線の地上設備(車両以外のすべて)と、その時価評価額に相当する国鉄債務8兆5千億円を国鉄から引き継ぎ、地上設備をJR本州3社にリースして債務を返済する。その際に『各新幹線の収益力』を反映したリース料を設定することにより『本州3社の収益力』を平準化するのだと説明された。償還期限は30年間、2年ごとの輸送実績により各社の負担を見直すことになっていた。『新幹線』のリース料負担割合で『会社全体(本州3社ー引用者注)』の収益力を調整するという詭弁(きべん)である。(中略)結局、東海道新幹線が東北・上越新幹線の建設費2兆円余りを肩代わりしただけだった」(葛西敬之「私の履歴書(24)『日本経済新聞』2015年10月25日付け)。
このように、かなりの無理を押し通してJR7社は設立された。だが、この時に内包された矛盾や歪みは、現在のJR7社体制においても課題として残っている。