完成車メーカーは今後10年で弱体化? EV普及で既存サプライヤーの多くも排除される
「CASE」「MaaS」とは何か
欧州議会が発行した文献「The Future of the EU Automotive Sector(EUの自動車産業の将来)」を題材として「自動車分野の未来」を概観するシリーズ企画。第4回は新たなビジネスモデルと産業の変化について考える。
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技術の新潮流は自動車産業のビジネスモデルと製造価値を生み出すパターンを変化させるだろう。まず、自動車産業の新潮流となりつつある「CASE」「MaaS」についておさらいしよう。
CASEとは、
・Connected:コネクテッド
・Autonomous:自動運転
・Shared & Service:シェアリング・サービス
・Electric:電動化
の頭文字をもとにした造語で、ディーター・ツェッチェ氏がダイムラーの最高経営責任者(CEO)時代に提唱した概念だ。
次にMaaSとは、
・Mobility as a Service
の略語で、フィンランドで生まれた。バスや電車、タクシー、飛行機など、すべての交通手段による移動をひとつのサービスに統合し、ルート検索から支払いまでをシームレスにつなぐ概念となっている。
インターネットや情報技術ITが普及した昨今では、インターネットにつながったパソコンやスマートフォンがあれば、さまざまな情報やサービスを利用でき、個人所有の時代から共有の時代になりつつある。それを背景に、公共交通やカーシェア、サイクルシェアなどの移動手段を、個人が必要に応じて共有するサービスがMaaSであり、CASEはMaaSを実現する代表的な技術を示している。
MaaSのメリットとは
経済産業省はMaaSのメリットについて、
・移動時の混雑回避、アプリによる効率的な交通手段の選択によるスムーズな移動(個人のメリット)
・新規需要の取り込み、利用者・需要の平準化、売り上げ機会の増大(企業のメリット)
・公共交通の混雑解消、CO2の削減、データ蓄積によるスマートシティー構想(自治体のメリット)
とまとめている。
創立30周年を迎えた欧州自動車工業会(ACEA)事務局長のエリック・フイテマ氏は2022年2月のインタビューで
「自動車産業は個人所有車だけを考えているのではない。自動車産業が製造する製品の形、それらが果たす役割や提供する移動の手段はいずれも極めて多様だ。欧州での公共交通機関による移動の半分以上は都市部や郊外での移動で、年間321億回にも及ぶ。欧州市民は、自家用車ではなくシェアカー、カープール(相乗り)、ライドヘイル(配車)などのオンデマンドサービスを利用し始めているが、中小企業はバンにより欧州経済に活力を与え、ビジネスの繁栄を支えている。トラック輸送はEU(欧州連合)域内貨物輸送の73%を占め、欧州大陸での貿易と商業を支える屋台骨だ」
と語った。