完成車メーカーは今後10年で弱体化? EV普及で既存サプライヤーの多くも排除される
人材獲得競争が激化

新たなバリューチェーンにおいて、自動車分野はデジタルサービス製品、BEVと燃料電池自動車(FCV)によるグリーン化に対応するため、新たな能力を構築しなければならない。さらに、激化する国際競争が加わって、必要な人材の獲得競争の激化が予想される。
欧州職業訓練開発センター(CEDEFOP)は、今後の欧州自動車産業で求められる各種技能(図)をまとめた。
2018年の欧州における雇用比率の内訳は、5か国に集中する自動車製造業が20%(2800万人)、サプライチェーン(金属、機械、繊維、樹脂・ゴム、電子、ソフト開発)が61%(8540万人)、販売とサービスが19%(2500万人)である。
チェコの自動車関連雇用とは

2021年第3四半期時点で、チェコインベスト(チェコ共和国の投資とビジネス開発機構) のサプライヤーデータベースには4000以上の企業が登録され、その大半が中小企業(SME)で、その1/4は自動車関連サプライヤーである。雇用状況を図のとおりだ。
チェコには1895年創立のシュコダと言う伝統あるOEMがあり、現在はドイツのVWグループ傘下で、チェコ国内自動車生産のシェア1位を占める。このため、チェコの自動車関連の雇用比率は3.5%以上とEU内で最大だ。
チェコは1990年の共産圏崩壊以降、海外直接投資の獲得に最も成功した国だが、チェコに進出した多国籍企業(MNC)の現地調達率は低く、チェコ経済活性化への影響は大きくなかった。今後、海外直接投資の地域経済への効果を高めるには、チェコサプライヤーの能力を向上し国際競争力を高める必要がある。
そのためにチェコ政府は2000~2002年にサプライヤー育成プログラムを設立し、MNCによるチェコ国内SMEへの投資促進を図った。プログラムには12のMNCと45のチェコSMEが参加した。
ワールドバンク社の海外投資アドバイザーサービス部門が、英国とアイルランドでの経験をもとにプログラムを設計。EU加盟事前プログラムが出資し、チェコインベストが活動を推進し、可能性のあるサプライヤーに次のサービスを無償で提供した。
・ビジネス関連情報
・入手可能な経済支援(投資優遇策)に関するコンサルティング
・未開発の土地/再開発を待つ土地、生産工場とオフィス候補地の発掘
・買収、合弁と供給先候補の発掘
・チェコ政府訪問の設定
・政府機関との連絡
・事後のサービス
プログラム終了後18か月で45の参加企業を評価した結果、主な成果は
・15社が新規事業を受注、2003年までの契約総額は4600万ドル
・4社が海外の新規顧客を獲得
・3社は付加価値の高い契約を締結
・参加企業の開始時点の部品シェア0~5%は、2004年には2.5~30%に向上
となった。
また、本プログラムを通じて
・推進機構の選定などで政府の主導が重要
・多国籍企業との密接な協力関係が重要
・必要性ではなくサプライヤーの潜在能力を重視
・世界標準に基づく事業評価プロセスの確立
・実践的な相談役の支援によりサプライヤーの自助努力を引き出す
という知見を得た。