BEV・PHEV・FCEV 結局どれが「使える」のか? 電動走行距離と価格帯から違いを探る
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- 自動車, EV, カーボンニュートラル, 脱炭素, BEV, PHEV, FCEV, EU自動車産業の将来を読み解く
BEVとPHEVの世界シェア
欧州議会が発行した文献「The Future of the EU Automotive Sector(EUの自動車産業の将来)」を題材として「自動車分野の未来」を概観するシリーズ企画。第2回は、世界市場の趨勢と併せてEVの種類別の特徴を考える。
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最近の市場はEV、すなわちバッテリーEV(BEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)に移行しつつある。2020年に欧州は中国を追い越して、EV販売台数とシェアでは世界最大の市場となった。
この間、欧州市場の総販売台数は縮小しているものの、EVの登録は2倍の140万台で市場の10%を占める一方、中国では6%、米国では2%である。2021年も欧州のEVは目覚ましい成長を続け、5月までの累積販売シェアは15%に達し、余裕をもって世界シェア1位を維持している。
中国でもEV台数の増加率は高く、2021年7月までに130万台以上の電動車が販売され、全市場の12%を占めた。
技術の熟成、自動車会社による投資増加と2025年および2030年に予定されるCO2排出規制の強化により、内燃エンジン車からEVに置き換わることは、今後10年間の望ましいシナリオだ。
PHEVが激増した背景
2019年から2020年で欧州EVの販売台数は倍増し中国を抜いたのは事実だが、実は電気のみで走行するBEV(上図の棒グラフ濃色部)だけではなく、電気と内燃エンジンを併用するPHEV(同、淡色部)もEVと呼んでいる。PHEVの販売増はBEVの販売増を上回っており、シェアも均衡に近づきつつある。
PHEV投入の主目的は、2020/21年の乗用車CO2規制対策だ。しかし欧州グリーンディール政策の一環として2021年末に欧州委員会ECが提案した「フィット・フォー55」の第1段階である2030年のCO2排出量目標(2019年比で55%減)も、PHEVで乗り切るという戦略のようだ。
第2段階である2050年目標(CO2排出量実質ゼロ)や欧州委員会が希望する「2035年に内燃エンジン車の販売禁止」については言及していない。
BEVよりPHEVの販売が伸びている理由として、まず商品ラインナップの拡充が考えられる。2020年に新規発売されたPHEVは、ベンツAクラスが年間販売台数1位、ボルボXC40が3位、フォードクーガーが6位となり、継続販売のアウディーQ5の販売台数は約7倍、VWパサートは4倍と激増した。
純電動航続距離が50km、ハイブリッド(HV)走行を加えた総航続距離が1000kmを超えるPHEVもあり、その利便性の良さも販売が増加した一因と考えられる。
トヨタは2022年4月19日(火)、米国内の4工場でエンジン生産の強化に計3億8300万ドル(約490億円)を投じてHV車用エンジンなどの生産設備を拡充すると発表した。2021年12月に、2030年までに4兆円を投資してグローバルで年間350万台のBEVを販売する目標を発表し、全固体電池事業(1.5兆円投資)や水素関連事業にも取り組んでいる。