完成車メーカーは今後10年で弱体化? EV普及で既存サプライヤーの多くも排除される
ソフトとハードは二人三脚

自動車分野は転換期にあり、持続可能なデジタライゼーションも新たな取り組みのひとつだ。ただし、いくら素晴らしいソフトウエアを搭載しても、ハードウエアが旧来のままでは競争力は獲得できない。ハードを生かすソフトとソフトを生かすハード、は車の両輪だ。
ここで、車両骨格部品のサプライヤーであるゲシュタンプ社長のインタビュー記事を紹介する。
●10年~30年後の進化の特徴
「電動化は明確なトレンドだが、徐々に進むだろう。当社は独自の軽量化技術を通じて車両に関するあらゆる進化に貢献してきた。軽量化はエネルギー消費量と汚染物質の排出量を減らす。BEVであれPHEVであれ、同じバッテリー容量で航続距離を伸ばすために軽量化は必要だし、バッテリーは車両に安全に搭載されなければならない」
●持続可能性は最優先事項
「これまで同様に今後も、自動車製造業も部品サプライヤーも、責任を持って取り組まなければならない課題だ。車の効率をより高める軽量化は環境に対する責任だ」
●車の軽量化トレンド
「CO2規制対応は自動車分野の重要な使命のひとつであり、エネルギー効率の高い製品の開発と製造のトレンドが高まると期待する。特にBEV用のボディーとシャシー部品の軽量化に期待する」
●自動車産業構造の転換はサプライヤーの機会
「自動車会社がCASEの4本柱への投資を重視し、車両骨格への投資を削減する傾向は、プラットホームの標準化傾向も併せて、外注化が促進されるため、部品サプライヤーにとって望ましい傾向だ」
●中国や米国に対する欧州の競合力
「欧州はコストでは勝ち目がないため、イノベーションとデジタル技術の最前線に位置する必要がある。この機会を逃してはいけないが道のりは遠く、政府の支援も必要だ」
●デジタライゼーションとインダストリー4.0(第4次産業革命)
「製造工場のスマート化による生産の効率向上と柔軟化に取り組んでおり、データを分析することにより、ばらつきが少なく、信頼性の高い生産プロセスの構築を進める」
ゲシュタンプ社は車のボディー骨格やシャシーも含めた大物プレス部品等を開発、製造しており、日本にも進出している。今後欧州ではこのような規模のサプライヤーが自動車会社からの外注増加により開発能力をさらに向上し、ティア0.5として深く開発に関与して行くのかもしれない。
パワートレーンがエンジンから電気モーターに代わっても、効率、規制対応と総合的な性能を左右するのはボディー骨格とシャシー部品であり、さらに部品やシステムのパッケージング技術も重要だ。つまり、ハードウエアの性能が高くなければ、車両を制御する高性能なソフトウエアもその機能を十分に発揮できない。あるいは、ハードウエアの機能を正しく理解しなければ、適切なソフトウエアは開発できない。
CASEもまたハードに大きく依存している。画像認識カメラや各種センサーというハードウエアがなければCASEシステムは正しく機能しない。集積回路(IC)チップもハードウエアだ。
テスラの成功は数多くの自動車関連エンジニアが支えている。ひとり乗りのコミューターBEVであってもこの事実は本質的には変わらない。電気やIT関連企業等、異業種からの新規参入BEVの成否はここにかかっている。