「翌日配送、もう限界かも」 現場を追い詰める物流崩壊――「翌日」にこだわる人は3割以下、それでも現場は止められないのか?

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物流現場は限界に達した。私たちが当たり前に享受する「翌日配送」は、現場の疲弊の上に成り立つ。速さを守るのか、持続可能な仕組みを選ぶのか。社会を支える物流の未来が、いま岐路に立たされている。

翌日配送文化の持続可能性

全国の20~70代の男女、日常的にECを利用するヘビーユーザー1000人を対象に実施された「EC・通販の発送に関する消費者意識調査」の結果(画像:DMソリューションズ)
全国の20~70代の男女、日常的にECを利用するヘビーユーザー1000人を対象に実施された「EC・通販の発送に関する消費者意識調査」の結果(画像:DMソリューションズ)

 注文した品が翌日には手元に届く――この翌日配送という仕組みは、私たちの暮らしにすっかり溶け込んでいる。宅配の大手各社は、地域ごとに発送の締め切り時間を細かく定め、スピードや時間指定の正確さ、荷物の追跡といったサービスの質を競い合ってきた。

 1976(昭和51)年にヤマト運輸が関東で宅急便を始めて以来、日本の物流は世界でも類を見ないほどの高みに達したといっていい。だがこの精緻な仕組みは本来、車やドライバー、そして倉庫で働く人々に十分な「ゆとり」があることを大前提としていた。配送の遅れをどこかで飲み込めるだけの余白があってこそ、安定した届け方は守られてきたはずだ。

 だが正社員が足りないと答える運輸・倉庫業が65.8%も存在する今の現場に、そんなゆとりはどこにも残っていない。供給の網の目は常にぎりぎりの負荷で動き続けており、わずかな事故や渋滞ひとつで、物流全体が麻痺しかねない危うさを抱えている。

 翌日配送は、使う側の便利さを突き詰める一方で、運ぶ側の余力を極限まで削り取ってきた。時間が短く定められるほど現場の動きは固まり、新しい人を育てたり、仕事の進め方を工夫したりする暇さえ奪われていく。将来に向けた備えができないまま、目の前の荷物をさばくことだけで一日が終わってしまうのが現実だ。

 その一方で、受け取る側の意識には少しずつ変化の兆しが見え始めている。ある調査によれば、ふだんからネット通販を使う人のうち、実に

「75.6%」

が翌日配送でなくても「購買意欲は下がらない」と答えている(DMソリューションズ調べ)。

 消費者が求めているのは、過剰なまでの速さよりも、むしろ「確実に届くこと」にあるのではないか。

 届くまでの時間を少し延ばすことは、決して後ろ向きなことではない。壊れかけている現場を立て直すために、避けては通れない道である。私たちが当たり前のように受け取っている「速さ」が、現場の働き手を使い潰し、物流そのものを危うくしている。その事実に、私たちはそろそろ向き合わなければならない。

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