夏目漱石は運転がヘタだった? 明治に日本へやって来た「自転車」、庶民はどう受け入れたのか
人々の生活に身近な自転車。そんな自転車はどのようにの人々の生活に浸透していったのか。さまざまな文献から歴史をたどる。
規制緩和される電動キックボード

2022年3月4日、道路交通法の一部を改正する法律案が閣議決定され、特定小型原動機付自転車、いわゆる電動キックボードの規制を緩和する方針が固められた。従来の道路交通法では、電動キックボードは原動機付自転車と同じ位置付けとされ、運転免許証の所持や、ヘルメットの着用が求められたが、改正案では運転免許証は不要、ヘルメットも着用が推奨とされ、自転車並みの扱いを受けるようになる。
近年、電動キックボードや小型電動アシスト自転車などの、短距離移動インフラとしての「マイクロモビリティ(超小型モビリティ)」が注目を集めている。その定義は「自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の車両」(国土交通省)とされ、車でも、バイクでも、自転車でもない新しい交通手段が、都市の中に新しい循環を生み出すことを期待されている。
新しいモビリティの登場は、常に庶民にインパクトを与える。
例えば、自転車ではどうか。日本に初めて自転車が渡ってきた時期については諸説あるようだが、佐野裕二『自転車の文化史』(中央公論社)では、斎藤月岑編『武江年表』の記述を根拠とした1870(明治3)年説が通説とされている(横浜では明治以前の登場という説の紹介もあり)。しかし、実際に庶民の間での認知が広がるようになるのは1900年以降であるようだ。