ヘリ前方の「ひも」の正体とは――100年以上現役、航空安全と運航効率を支えるヨーストリングの知られざる効果

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航空機の安全を支えるのは、時に100年以上前に発明された「ひも」だ。ライト兄弟が1903年に開発したヨーストリングは、低コスト・高耐久で微小な横滑りも即座に検知。高度計器と併用し、現代のヘリ運航にも不可欠な飛行補助装置である。

空の基準装置ヨーストリング

ヘリコプター。画像はイメージ(画像:Pexels)
ヘリコプター。画像はイメージ(画像:Pexels)

 クルマやバイクを運転する際、人は感覚的に「右に曲がっている」「左に曲がっている」と認識できる。それは道路や引かれたラインといった基準があるからだ。地上での日常的な移動は、ほとんどが2次元的な感覚で成立する。

 しかし、空の移動では

「3次元上」

で方向を判断するのが難しい場合がある。そこでヘリコプターには、基準となる「ヨーストリング」が備えられている。グライダーや飛行機でも使われることがある装置だ。

 ヨーストリングは、航空機の前後軸に対する相対的な気流の方向を示す装置である。

・ヨー(偏揺れ)
・ストリング(ひも)

を組み合わせた言葉で、和訳すれば「偏揺れひも」となる。スリップ・ストリングとも呼ばれ、真っすぐ飛行しているかどうかを判断する重要な指標だ。

 ヨーストリングは、世界初の有人動力飛行を1903年に成功させたライト兄弟のウィルバー・ライトが発明したとする説が有力だ。航空史上、最も初期の計器でありながら、現在でも現役で使われている。

 現在は精度の高い計器が存在するが、ヨーストリングには低コストで軽量、電力を必要とせず壊れることがほとんどないという強みがある。アンテナのように電波を送受信するわけでもなく、センサーでもない。それでも高感度で即時に有用な情報を提供する。万一計器が故障しても、剥がれ落ちない限りヨーストリングは使用可能で、冗長性にも優れている。

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