中古テスラは「二束三文」って本当? バッテリー不透明性と「売って終わり」政策が奪う国益とは
テスラ・モデル3をはじめとする中古EVは、バッテリー劣化の不透明性や制度上の二次流通不備で価格が低迷している。国内では中古EVの8割超が輸出され、資源と市場価値の損失を招く現状を、技術進化や米国市場の成熟事例を踏まえつつ分析する。
バッテリーの不透明リスク

テスラをはじめとする電気自動車(EV)は、中古価格が落ち込みやすい。その背景には技術面、制度面、市場面という三つの要因がある。技術面で最大の課題はバッテリーだ。EVの価値を決める中心的要素である一方、劣化状態を正確に評価する手段は確立していない。中古車として流通する際、電池の状態が見えないことは買い手にとって最大のリスクとなる。
購入者は将来の故障や性能低下を不安視し、結果として価格を引き下げざるを得ない。また、テスラ以外のEVでも同様の問題は存在し、ブランドを問わず中古市場全体の信頼感に影響している。バッテリー性能の進化速度に対して、市場が追いつかない構図も、価格低迷の背景にある。
さらに、消費者心理の影響も大きい。走行距離や整備履歴で状態をある程度推定できる内燃機関車に比べ、EVは情報が限られる。そのため、中古購入者は「見えないリスク商品」として慎重にならざるを得ず、市場形成を阻む要因になっている。
こうした技術的不透明性は、国内の中古EV市場が十分に育たない構造を作り出している。日本では中古EVの八割以上が輸出され、国内市場は事実上限定的にしか機能していない。その象徴的な例がテスラ・モデル3である。