「充電に並ぶのは、もう終わりにしたい」 日産はEVの常識を塗り替えるのか? 年間充電が最大65%減少、“自分で作る車”という選択肢

キーワード :
,
オランダの新興ソーラーカー「Lightyear」は日産と提携し、太陽光で最大23km走行可能なEVを実証。都市部利用で充電回数を最大65%削減、災害時バックアップとしても期待される自律型移動の新潮流を探る。

実証された性能と採算性

日産・アリアに搭載されたソーラーパネル(画像:ライトイヤー)
日産・アリアに搭載されたソーラーパネル(画像:ライトイヤー)

 日産との提携に至ったライトイヤーは、2022年11月に世界初の量産型ソーラーカー「Lightyear 0」の生産を始めた。車両に載せられた5平方メートルのソーラーパネルで電力を充電し、最適な条件下では1日70kmを走行できる。年間で最大1.1万km分を太陽光で発電できるように組まれた車両だ。現在は次世代モデル「Lightyear 2」の生産・販売の準備を進めており、個人による4万台以上の予約注文に加えて、フランスのArvalなどのフリート企業による先行予約も約2万台に達している。

 実証車両には日産のEV「Ariya(アリア)」が採用され、太陽光による充電走行をどこまで続けられるかを検証している。ライトイヤーが開発した2枚組ガラスでセルを挟む曲面構造のソーラーパネルによって、量産プラットフォームへの実装が可能となった。アリアには総面積3.8平方メートルのカスタムソーラーパネルがボンネットやルーフ、テールゲートに組み込まれ、基本性能や見た目を損なうことなく統合された。

 日産の発表によると、実証車両はバルセロナのような都市では、太陽光による走行が1日平均で17.6km可能で、ユーザーの利用実態に応じて充電頻度を35~65%削減できる。走行試験では、2時間で80kmを移動している間に太陽エネルギーを0.5kWh発生させ、追加充電なしで最大3kmの航続距離を提供できた。

 晴天条件下では最大23kmの追加航続距離を供給可能だが、年間を通じて日照時間が少ないロンドンでは1日平均10.2kmで、最大距離から半減する。一方で、インド・ニューデリーでは18.9km、UAE・ドバイで21.2kmなど、地域によっては航続距離がさらに増える。

 この技術の利点は走行エネルギーの確保にとどまらず、駐車中の熱管理を自律的に行える点にある。炎天下の駐車時にソーラー電力を活用してバッテリー冷却システムを稼働させ、熱による性能劣化を抑えられれば、車両のリセールバリューを維持する手段となる。ソーラーEVは日照条件に大きく左右されるため、現時点では補助的なエネルギー源の役割を担う。実証データは量産車プラットフォームとの整合性を検証する段階にある。

 日産・アリアの航続距離は640kmであるのに対して、車載ソーラーシステムは最大23kmを供給するが、電費効率が飛躍的に向上するわけではない。実用的な水準まで能力を高めるには、さらなる技術革新が必要となる。

全てのコメントを見る