EV化が進む「自動車産業」 覇権握るのは米中?欧州? EU議会の提言とは
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- 自動車, CASE, EV, カーボンニュートラル, 脱炭素, BEV, PHV, 欧州議会, EU自動車産業の将来を読み解く
欧州議会が発行した文献を題材として「自動車分野の未来」を概観するシリーズ企画。第1回は「世界自動車バリューチェーンの趨勢」をテーマとして「欧州自動車分野の動向と将来への影響」を考える。
規制強化も 大気汚染は高水準
1994(平成6)年、トヨタ自動車は「資源と環境」をテーマとした次世代車両の開発を開始し1997年には世界初の量産ハイブリッド車が発売された。「プリウス」の誕生である。同年に京都で開催されたCOP3でも注目を集めた。
このハイブリッドシステムはプリウス以外にも転用され、トヨタ自動車1社で2022年3月には電動車の累積販売台数が2000万台を超えた。一方、全世界の全自動車会社による2012~2021年のバッテリーEVとプラグインハイブリッド車の累積販売台数は1724万台でそのうちBEVの比率は70%前後だ。
●欧州の大気汚染とVWのディーゼル不正事件
COVID-19により経済活動が停滞しても、欧州では大気中の汚染物質濃度は依然として高い水準にある、と欧州環境庁EEAが発表した。欧州では1998年にユーロ1排気ガス規制が施行されて以来、現在はユーロ6にまで強化されてきたが、実際の大気中濃度は規制値をはるかに超えるという矛盾が生じている。
原因の一つは試験法であるため、2024年予定のユーロ7規制では実走行に近いばらつきを加味したRDEという試験法の導入が検討されている。
2015年9月米環境保護庁EPAは、VWによるディーゼルエンジンの排出ガス規制対応に不正があったと発表した。不正は2009年までさかのぼり、VWだけで1100万台が対象である。これも矛盾を生じる原因の一つだ。
厳しい排気ガス規制に適合するには、高価な排気後処理装置を装着し、さらに燃費を犠牲にする必要があるが、顧客は燃費の悪化を嫌う。そのためVWは、試験中であることを感知した場合のみ排気ガス後処理制御を完全に有効にするソフトウエアを装着して排気ガス試験に合格させた。