ローカル路線バスの旅から学ぶ「予測不可能」な楽しさ【リレー連載】現代人にとって旅情とはなにか(1)

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現代の旅は効率重視が主流だが、意外な「エモい瞬間」が旅情を呼び覚ます。増加するひとり旅の傾向や、ローカル路線バスの旅から見えてくる、旅の本質とは? 意外な場所やハプニングが生む心の豊かさを探る。

ローカル路線バスの旅にヒントを得る

ローカル路線バスのイメージ写真(画像:写真AC)
ローカル路線バスのイメージ写真(画像:写真AC)

 現代社会は効率性と合理性が求められる時代だ。私たちは日々の生活で時間を有効に活用し、成果を最大化することを優先するあまり、心の豊かさや感情の触れあいを犠牲にしがちである。しかし、旅はそんな現実から一時的に解放される貴重な機会を提供してくれる。

 旅情とは、単なる移動や観光にとどまらず、未知の地を踏みしめ、そこで出会う人々や文化、風景と触れ合うことで生まれる深い感情のことだ。旅先での小さな発見や、異なる環境の中で感じる自分自身の変化は、合理性を超えた価値を私たちに与えてくれる。

 このリレー連載「現代人にとって旅情とはなにか」では、現代人がいかにしてこの非合理的な旅情を大切にし、日常生活に取り入れていくことができるのかを探求する。さまざまな視点から旅の魅力をひもとき、心の豊かさを取り戻すヒントを提供することで、読者に新たな旅の楽しみ方を提案したい。これからの連載を通じて、旅の本質に迫り、ともにその価値を再発見していこう。

※ ※ ※

 今回「現代人にとって旅情とはなにか」というテーマを編集部から頂戴したとき、正直にいうと少し戸惑ってしまった。旅は好きなものの、そこまで深く考えたこともなく、正面から取り組むにしても重たいテーマだ。

 ましてや、さまざまな視点から旅の魅力をひもとき、心の豊かさを取り戻すヒントを提供することで、読者に新たな旅の楽しみ方を提案する――となると、さらにハードルが高くなるといっていい。とはいえ、何かを書かないといけないので、少しずつひもといていこうと思う。

 旅情とは、つまるところ心の動きであり、今風にいうと

「エモい瞬間」

にほかならない。ただ、現代の旅の多くは、メジャーな観光地やテーマパークなど、消費が中心になっている。もちろん、有名な観光地やテーマパークでも「エモい瞬間」はあるが、それでも何か物足りなさを感じるのは筆者(ネルソン三浦、フリーライター)だけだろうか。SNSで、観光地やテーマパークではない意外な場所がバズるのも、何かしら関係があるように思える。

 筆者の好きな旅番組のひとつに、

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」

がある。番組を見ていると、

・ガチ感
・生き生きとしたエモさ

にハッとすることもしばしば。もしかしたら、ローカル路線バス乗り継ぎの旅にヒントがつまっているのかもしれない。生き生きとしたエモさを切り口に番組を見直したとき、

・結果を予定しない
・ハプニングやトラブルも楽しむ
・グループで旅をする

の三つのポイントが浮かびあがってきた。

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