「トヨタ陥落」は必然だったのか?――「BYD」がシンガポールで首位、日本車敗北の構造と背後にある“都市国家”の論理

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シンガポールで2025年、BYDが新車登録首位に浮上。EV比率は45%に達しHVを超過。政府主導の制度と都市インフラが市場を動かし、従来の日本メーカーの優位を揺るがす変化の実態。

シンガポールで起きた「逆転」の意味

シンガポール(画像:Pexels)
シンガポール(画像:Pexels)

 シンガポールの2025年における乗用車新車登録で、中国の比亜迪(BYD)がトヨタ自動車を上回り、初めて首位に立った。新車全体に占める電気自動車(EV)の比率は前年から11ポイント上昇し45%となり、これまで主力だったハイブリッド車(HV)を抜いた。

 シンガポール陸運局の統計では、乗用車新車登録台数は前年比22%増の5万2678台。そのうちEVは64%増の2万3684台で、HVの2万435台を初めて上回った。ガソリン車は7638台とわずかに減少している。

 メーカー別では、BYDが1万1184台で首位、トヨタが2位、ドイツのBMWが3位だった。BYDはここ数年で市場シェアを急拡大させ、登録台数は前年から8割増に達した。対して、HVを主力とするトヨタは前年比5%減にとどまり、勢力図の変化が鮮明になった(『日本経済新聞』2026年1月26日付け)。

 こうした変化は、中国メーカーの躍進だけで説明できるものではない。高度に管理された都市国家の制度的な枠組みが、電動化の流れを加速させた。長年、耐久性や資産価値を強みとしてきた日本勢は、高額な権利金制度や政府の廃車促進策が支配する特殊な環境下で、従来の優位性を活かせなくなりつつある。

 シンガポールでは車両が長期間の資産ではなく、ソフトウェアとともに更新される消耗品に近い扱いとなってきた。BYDはこの変化を見極めて攻勢をかけ、トヨタは旧来の物理的耐久性という価値観にこだわった。この認識の差が、市場の勢力図を大きく塗り替える結果となったのかもしれない。

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