トヨタが世界を「現実」に引き戻した日――「5分で充電、10年壊れない」は実現するか? 日本車、新興国市場の主導権奪還シナリオ
欧米の脱炭素規制転換

2025年12月、脱炭素をめぐる環境規制は大きく方向転換した。欧州連合(EU)は、2021年に掲げた「2035年エンジン車新車販売禁止」の方針を修正し、事実上、2035年以降もエンジン車を認める案を示した。
理想としての環境保護が、
・欧州の基幹産業である自動車産業の空洞化
・中国メーカーによる市場浸食
といった現実の圧力に押し返された形である。EUはこれまで電気自動車(EV)を中心に電動化を強く推し進めてきたが、域内の雇用や経済競争力を維持するには、ハイブリッド(HV)やプラグインハイブリッド(PHV)など複数の選択肢を認めざるを得なかった。
米国でも規制緩和の動きが鮮明になった。トランプ大統領は、バイデン前政権が導入した厳格な燃費基準を大幅に引き下げる計画を打ち出した。前政権は2031年モデルの企業別平均燃費(CAFE)を1ガロン(約3.7L)あたり約50マイル(約80km)と設定していたが、新たな方針では34.5マイル(約55km)に落とされる。およそ3割の緩和だ。
さらに、基準達成のために利用されてきた「規制クレジット」の取引制度も、2028年モデルから廃止される。これにより、
「排出枠の売却益」
で利益を膨らませてきた特定のEVメーカーはその優位を失い、全メーカーが製造コストと販売価格の整合性で競うことになる。トランプ大統領は前政権の政策について、
「ばかげたほど負担が重く、自動車メーカーに高コストの制約とさまざまな問題を押し付けた」(『ブルームバーグ』2025年12月4日付け)
と断じた。現実には、2025年9月の平均新車価格が初めて5万ドルを超え、規制が消費者の家計に重くのしかかる状況が明らかになっている。新車購入のハードルは高まり、移動手段としての自動車の入手も難しくなっていた。