アメリカ流「戦争方法」とは? 物資投入とロジスティクスの力がもたらす戦略的優位性をご存じか

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アメリカ軍の戦い方は、人的犠牲を最小限にとどめるために大量の物資を投入して戦争の勝利を追求するとの基本方針で一貫している。

はじめに――「日本流の戦争方法」

アメリカ軍(画像:カプラン公益財団)
アメリカ軍(画像:カプラン公益財団)

 この小論で「アメリカ流の戦争方法」とロジスティクスについて考える前に、最初に「〇〇流の戦争方法」という概念について簡単に解説しておこう。

 例えば、筆者(石津朋之、歴史学者)は「日本流の戦争方法(The Japanese Way in Warfare)」という概念を唱えている。「日本流の戦争方法」という概念は、今日に至るまで必ずしも市民権を得たとはいえない。

 実はこれは、「イギリス流の戦争方法」という概念を援用したものであるが、かつて20世紀を代表するイギリスの戦略思想家バジル・ヘンリー・リデルハートは、イギリスが「イギリス流の戦争方法」と呼ばれる国家戦略を用いて大英帝国の維持および運営を図ろうとしたと指摘した。また、後述するように今日までのアメリカはさまざまな批判を浴びながらも、その圧倒的な技術力と産業力、そして民主主義というイデオロギーを基盤とした「アメリカ流の戦争方法」を確立しつつあるとされる。

 そうしたなか、今日の日本に検討が求められていることが、日本独自の世界観に立脚した「日本流の戦争方法」なるものを構築する、さらにはそこにロジスティクスを位置付けることというのが、この小論の基本的立場である。

 当然ながら、「日本流の戦争方法」とはあくまでも比喩的な表現に過ぎず、断じて

「戦争を積極的に肯定する概念」

ではない。むしろ、その意味するところは、日本が置かれた地政学的条件や軍事力のあり方といった狭義の要件はもとより、歴史を基礎として日本の戦争観や平和観に十分に目配りした日本独自の国家戦略思想である。

 もちろん、これが直ちに日本が過去において独自の国家戦略を持ち得なかった事実を示唆するわけではない。筆者の立場は逆である。例えば第2次世界大戦後のいわゆる「吉田路線」に対しては、日本独自の国家戦略としてさらに高く評価されてしかるべきであろう。

 だが同時に、外交および安全保障政策の大きな転換点を迎えたとされる今日、日本がもう少し積極的に国際秩序形成に参画すべきであるとの意味において、新たなる国家戦略思想である「日本流の戦争方法」の構築が必要とされているというのが筆者の真意である。そして、こうした「日本流の戦争方法」の下では、軍事力(防衛力)の基盤となるロジスティクスのあり方が大きく問われることになろう。

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