アメリカ流「戦争方法」とは? 物資投入とロジスティクスの力がもたらす戦略的優位性をご存じか
第2次世界大戦(太平洋戦争)におけるアメリカ軍のロジスティクス
例えば、第2次世界大戦における太平洋方面での戦いでアメリカ軍は、「海上補給部隊(フリート・トレイン)」と呼ばれる移動式のロジスティクスジス・システムを構築した。
とりわけ1944年のマーシャル諸島占領以降、アメリカの大規模な船舶建造計画にも助けられる形で、アメリカ軍の海上でのシステムは、ロジスティクス支援の主要な形態へと発展する。
すなわち、油槽船、弾薬運搬船、修理用船舶、タグボート、病院船、補給船などを有する「海上補給部隊」の構築であり、同国はロジスティクスの側面でも日本を圧倒したのである。
第2次世界大戦に代表される総力戦時代の戦いでは、とりわけ大量の物資を用いた「累積的効果」が大きくものをいうのである。
湾岸戦争におけるアメリカ軍のロジスティクス

1990~91年の湾岸危機および湾岸戦争でアメリカは、技術力を基礎として圧倒的な軍事的勝利を獲得したが、実は、この戦いでも同国のロジスティクス能力が果たした役割は大きい。
湾岸戦争で興味深い事実は、地上での戦いが約100時間で終結したのに対し、その前段階の配備に6か月の時間があった事実に加え、後段階の撤退――「砂漠の送別」作戦――に10か月を費やした点である。
前段階では、いわゆるパウエル・ドクトリンに従って、十分な時間をかけて武器弾薬、糧食などを中東地域に集積するなど、戦いに必要な準備を着実に整えた。また、後段階の「砂漠の送別」作戦では、兵士はもとより、兵器や機材を戦場となった砂漠地帯から飛行場や港湾に移動させ、それらを中東からアメリカ本国へと持ち帰ったのである(W.G.パゴニス著『山・動く――湾岸戦争に学ぶ経営戦略』同文書院インターナショナル、1992年、225~237ページ)。
湾岸戦争で実質的に多国籍軍のロジスティクスを統括したパゴニスは、以下のような結論を下している。すなわち、「この戦争は、戦場でというより後方の支援作戦本部において、ワシントンとリヤドでというより、主要補給ルートにおいて戦われた。何か月にも及ぶ後方支援の準備が行われたからこそ、空中と地上での戦闘を1012時間で終わらせることができたのだ。そして、戦争前から戦争期間中まで、何か月もかけて計画を立てていたから、戦域からの撤退を成功裏に完了できたのである」(『山・動く』236ページ)。
湾岸戦争でのこうしたロジスティクス担当者の活動を高く評価して、アメリカ議会報告書は次のように記している。「アメリカのロジスティクスは歴史的に見ても成功を収めた。戦闘部隊を、地球を半周して移動させ、世界規模の補給線(ライン)を構築し、前例がないほどの即時対応性を維持し得た担当者は称賛に値する」。