EVは「大雪で終了」「立往生で凍死」という暴論はなぜ無くならないのか? 感情的にならず、まずは科学的事実・雪国オーナーの声に向き合え

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「電気自動車は電力不足や大雪のときは使えない」「立ち往生したら凍死する」などという声がある。実際はどうなのか、解説する。

一斉充電でも0.03%

電気自動車(画像:写真AC)
電気自動車(画像:写真AC)

 次世代自動車振興センターの統計によると、2021年時点での国内のEV保有台数は14万台弱だ。通常は考えにくいものの、仮にこの10%にあたる1.4万台が同時に3kWで充電した場合でも、消費電力は42MWであり、これまでの冬季の国内の最大需要を記録した2021年1月8日の156GW(15万6000MW)と比べると、増加量は0.03%にも満たない。今後EVの保有台数が10倍に増えても0.3%未満だ。

 さらに、後述するが、自家用車は常に9割程度が駐車されており、駐車時間中に充電を終えれば問題ないため、電力の需給に合わせて夜間などに充電時間を調整することは、決して難しくない。実際にこの冬も、多くの電力会社でデマンドレスポンス(DR = 電力需要や市場価格に合わせて単価を変えたり、インセンティブを用意したりすること)などにより、需要を平準化する取り組みが行われている。

 また、米カリフォルニア州が2022年9月に記録的な熱波に襲われ、電力需給が逼迫した際には、一部の報道やSNS上で「EV充電禁止に」と書かれたが、実際は「不急の場合はEVの充電時間を夕方ではなく深夜にずらすように」という要請だった。

 さらに、同州サクラメントで電力網の戦略的ビジネスプランナーを務めるエリック・ケイヒル氏は、同州で予定されている2035年の新車販売100%EV化に「対応できると確信している」という。10年以上という長い準備期間があることに加え、州政府がEVに対する明確なビジョンを示していることから、設備や制度(DRや後述のV2Hなど)を整えることができるというのだ。ただし、逆に言えば「政府などがあらかじめビジョンを示さなかった場合は、対応が困難となる可能性もある」点に注意すべきだろう。

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