EVは「大雪で終了」「立往生で凍死」という暴論はなぜ無くならないのか? 感情的にならず、まずは科学的事実・雪国オーナーの声に向き合え

キーワード :
,
「電気自動車は電力不足や大雪のときは使えない」「立ち往生したら凍死する」などという声がある。実際はどうなのか、解説する。

EVは立ち往生したら凍死する?

燃料別の寒冷地での効率比較(画像:米エネルギー省、Canuck氏の試験結果より八重さくら作成)
燃料別の寒冷地での効率比較(画像:米エネルギー省、Canuck氏の試験結果より八重さくら作成)

 冬になると決まってSNSなどで見かける「EVは立ち往生したら凍死する」という意見は、2022年12月に日本海側で大雪が降った際も多く見られた。EVは低温になると電池の性能が低下したり、暖房の使用などで航続距離が短くなったりするといわれており、米エネルギー省の資料によると、氷点下7度の環境では、25度のときと比べて内燃機関車が15%の低下なのに対し、ハイブリッド車(HV)では30~34%の低下、EVは39%の低下とされている。さらに内燃機関車のように携行缶での補給が困難なので、内燃機関車と比べて立ち往生した際のリスクが高まるという指摘は誤りではないように見える。

 それでは、一概にEVは寒冷地や豪雪地帯に向いていないかといえば、そうとも言い切れない。米エネルギー省の試験結果は2013年に公開されたものであり、約10年前の古い車両を使用しているが、まだ公的機関の試験結果に反映されていない最新のヒートポンプを搭載したEVであれば、暖房による消費電力は約3分の1になると言われている。

 さらにテスラなどの一部のメーカーや車種には、出発前に電池を暖める「プレヒート」機能があり、低温による電池の性能低下を抑えることができる。なお、EVは自宅や目的地などの駐車場での充電が基本であり、(特に寒冷地では)日常的に200Vコンセントにつなぐため、プレヒートにより電池が減る心配はない。

 これらの最新機能を装備したEVを用いた公的機関での試験結果はまだ公開されていないが、すでに寒冷地に住む多くのEVオーナーが検証を行っている。例えばYoutubeでさまざまな検証動画を公開しているCanuck氏が氷点下8度の環境でテスラ・モデルYを使って試験したところ、プレヒートをした場合は19%、プレヒートしない場合でも28%の損失にとどまっている。これはあくまで一例に過ぎないが、米エネルギー省の試験結果と比べると、この結果はHVよりも高効率であり、内燃機関車にも迫る効率である。

全てのコメントを見る