EVは「大雪で終了」「立往生で凍死」という暴論はなぜ無くならないのか? 感情的にならず、まずは科学的事実・雪国オーナーの声に向き合え

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「電気自動車は電力不足や大雪のときは使えない」「立ち往生したら凍死する」などという声がある。実際はどうなのか、解説する。

立ち往生想定、検証結果は?

雪が積もった道路(画像:写真AC)
雪が積もった道路(画像:写真AC)

 さらに国内でも多くのEVオーナーが立ち往生を想定した検証結果を公開しており、近年のヒートポンプ式の暖房を装備したEVであれば、内燃機関車と同様、電池や燃料の残量に応じて丸一日以上は暖房を使えることが知られている。雪国では万が一に備えてガソリンが半分になったら給油する使い方が知られているが、自宅充電が基本となるEVもこれと同様、(雪国に限らず)帰宅後は毎日コンセントに挿して充電することが一般的だ。(なお、筆者は自宅充電できない環境でのEVの購入は推奨しない)

 また、EVはエアコンの代わりにシートヒーターを使うことで、電池の持ちは数日以上まで伸びる。シートヒーターだけでは凍えるという指摘もあるが、例えば多くのEVの性能を検証しているEVネーティブ氏が氷点下29度の環境で立ち往生を再現した試験を実施。試験と同時にライブ配信を行い、「シートヒーターのみ」でも危険な状態になることなく一晩過ごせることを証明している。

 一方でEVは携行缶での給油ができないことから電欠時や解消後の救援を気にする声も聞かれるが、立ち往生のリスクが高い地域には、すでに移動式の急速充電器が配備されている。数分の充電で数十km走行可能であり、多くの場合、近隣の充電設備までたどり着けるだろう。さらにEVからEVへ給電できる車種も発売されており、将来的にEVが増えた場合は、街灯や電柱など電気が来ている場所に非常用コンセントを設け、非常時はそこから給電する方法も考えられる。

 ただし根本的な問題は(EVや内燃機関車にかかわらず)立ち往生を発生させたり、車内での長時間待機を余儀なくされたりする点だ。立ち往生が発生するような寒波はほとんどの場合、事前に予測可能であり、そのような状況では対策なしで車を使用しないことを徹底し、除雪が追いつかないと予測される災害的な状況では迷わず通行止めにするなど、行政の対応見直しも必要だろう。万が一それでも立ち往生が発生した際は命を守ることを最優先し、乗員を車内で待機させるのではなく、救助できる体制を整えるべきだろう。

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