EVは「大雪で終了」「立往生で凍死」という暴論はなぜ無くならないのか? 感情的にならず、まずは科学的事実・雪国オーナーの声に向き合え

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「電気自動車は電力不足や大雪のときは使えない」「立ち往生したら凍死する」などという声がある。実際はどうなのか、解説する。

EVや蓄電池と再エネによるエネルギー安全保障の強化

太陽光発電のイメージ(画像:写真AC)
太陽光発電のイメージ(画像:写真AC)

 近年は春や夏を中心に太陽光の発電量が増加して逆に昼間に電気が余り、市場連動型の電気プランではkWh単価が0円に近づくことも多い。冬でも、年末年始のような企業が休みとなる時期にも発生することがあり、日本卸電力取引所(JEPX)によると、2023年の元日にも、午前10時から14時ごろに下限の0.01円まで下落した。また、沖縄電力では再エネの増加により、元日に史上初となる再エネの出力制御(電力網の需給バランスが崩れて不安定にならないよう、太陽光などの発電を停止する措置)も行われた。

 前述の通り、昼間でも走行中の車両は1割程度であり、駐車中に電気が余っている昼間に充電することで燃料費を節約できるだけでなく、化石燃料の消費削減やエネルギー自給率の向上につながる。日本を含む多くの国がロシアのウクライナ侵攻などに伴う化石燃料の高騰に苦しんでおり、エネルギーのほとんどを輸入に頼る日本では、特に影響が大きい。新電力ネットが公開している化石燃料の統計情報によると、2022年の化石燃料の輸入額は、2013年に記録した最高額(約25兆円)を大きく上回る約30兆円に達するとみられている。

 安定したエネルギー確保が国家安全保障にとって重要なことは言うまでもなく、化石燃料の輸入に頼る限りリスクが付きまとう。再エネ設備を輸入に頼るリスクも指摘されているが、一度設置すれば数十年稼働する「設備」と、常に輸入を続ける必要がある「燃料」では、大きくリスクが異なる上に、再エネ設備は国産化も可能だ。実際に米国では中国産の太陽光パネルに高額な関税をかけ、国産化を進めている。

 これらのリスクに対して、例えば欧州では2022年に2021年の約1.5倍にあたる41GW以上の太陽光発電を追加し、わずか1年で総容量が167.5GWから208.9GWへと約25%も増加した。さらに欧州の二酸化炭素排出量を調査しているCREAのリポートによると、11月の排出量は過去30年間の最低記録を更新した。これは太陽光や風力などの再エネの増加に加え、暖冬の影響などが組み合わさったことが原因とされている。

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