「EV時代」はなぜ止まったのか? 6.8万口でも埋まらない、“充電できない社会”の正体

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米国のEVシフトが、かつてない機能不全に陥っている。バイデン政権が投じた50億ドルの巨額予算に対し、実支出はわずか0.6%。現場の目詰まりや政権交代という「政治の不確実性」が、産業の歩みを根底から揺さぶる。日米の比較から見えてくるのは、車両の性能以上に普及を阻む、強固な社会構造の壁だ。

巨額予算を阻む執行率の壁

米国(画像:Pexels)
米国(画像:Pexels)

 バイデン政権(2021年1月~2025年1月)が充電インフラ整備に向けて50億ドル(約7944億円)という巨額予算を投じた国家電気自動車インフラ(NEVI)プログラム。しかし、2024年末時点での実支出は約3000万ドル(約47億6670万円)という極めて低い水準に留まった。手続き上の障壁や送電網の制約、さらに政権交代といった要素が重なり、政策と現場がどれほど切り離されているかという、米国が抱える構造的な課題が浮き彫りになった。

 2021年にインフラ投資雇用法に基づいて始まったこの計画は、高速道路沿いのネットワーク構築を目的とした5年間の連邦資金だ。だが、国際エネルギー機関(IEA)の報告書「Global EV Outlook 2025」をひもとくと、実際に稼働した設備に使われた額は、予算全体の0.6%にも満たない。この数字の重みは、未執行の予算があるという事実を超えて、産業全体に深刻な影を落としている。

 期待された予算が動かないことで、政府の公示を信じて生産体制を広げ、部材を揃えてきた周辺企業は、キャッシュフローの凍結や回収不能な投資に直面することになった。民間資本を呼び込むはずの計画で資金の流れが止まれば、当然ながら融資の条件も厳しくなる。

 結果として、勢いがあったはずの新興企業が市場から退場させられるといった事態まで招いている。資金を投じれば物事が動くという理屈は、行政の透明性や政治の継続性といった複数の壁を前に、いま、その機能不全を隠しきれなくなっている。

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