EVは「大雪で終了」「立往生で凍死」という暴論はなぜ無くならないのか? 感情的にならず、まずは科学的事実・雪国オーナーの声に向き合え
「電気自動車は電力不足や大雪のときは使えない」「立ち往生したら凍死する」などという声がある。実際はどうなのか、解説する。
再生エネルギーはコスト低減、シェア拡大

再エネはコストの低減とともに、欧州だけでなく米国でも10月の再エネ比率が前年の20.4%から22.6%に増加、さらに欧米に限らず世界中でシェアを伸ばしている。国際エネルギー機関(IEA)が年末に発表した再エネに関するリポート「Renewables 2022」によると、インドや中国でも当初の予想を上回る再エネが導入され、中国では2030年目標の1200GWを5年早く達成すると見られている。
1年前の予想と比べると、世界全体ではこの1年間で予想より30%多く導入され、さらに今後5年間で2倍に達し、過去20年間に導入された量と同等の量が追加されるとみられている。この結果、2025年には再エネの発電量が石炭を追い抜き、世界最大の電源になるとしている。
このように化石燃料の消費を減らし、エネルギー安全保障にも寄与する再エネだが、一方で天候などによって発電量が変動することが課題とされ、現時点では主に火力発電や揚水式発電、蓄電池などを用いて変動を吸収している。ただしGMの構想や豪・南オーストラリア州の実例を見れば、大きな蓄電池を搭載していて、一般的な定置型蓄電池よりも安価なEVがこの役割を担えることは、想像に難くない。例えば家庭向けの蓄電池は、最も安価なテスラ・パワーウォールでも工事費込みで1kWhあたり12万円以上かかるが、BYDのAtto3のような安価なEVなら、V2Hの工事費を含めても1kWhあたり9万円程度だ。
安全保障を語る上で食料自給率が話題になることは珍しくないが、エネルギーがなくては生産した食料をわれわれの食卓まで届けることすら難しい。EVを語る際は単に「車」としての側面だけではなく、インフラの一部という視点を持つことが重要である。