全7路線を再生可能エネルギーに切り替え! 「東急」から学ぶ鉄道企業による環境対応の未来とは
再エネ導入に積極的な東急・東京メトロ

一方、線路や車両基地などは未活用の余剰が多い。これら鉄道用地は関係者以外の立ち入りは禁じられているので、鉄道運行に支障をきたさない範囲であれば発電施設の設置が可能だ。
こうした背景から、鉄道事業者は活用できていない余剰地に発電設備を整備していった。レールとレールの間に太陽光パネルを敷き詰めたり、列車の騒音を遮断するための遮音壁に風力発電の風車を取り付けたりといった具合に再生可能エネルギーの試行錯誤が繰り返された。
再生可能エネルギーを導入する取り組みは、広い範囲で線路網を張り巡らせるJR各社がスケールメリットを生かせることもあって目立っている。
対して、大手私鉄は大都市近郊にしか路線を有していない。JR各社と比べ、私鉄は再生可能エネルギーをはじめとする環境分野での取り組みでスケールメリットを生かしにくい。さまざまな事情から、私鉄は再生可能エネルギー導入のハードルが高かった。
しかし、東急や小田急といった大手私鉄は電力の自由化を機に電力事業へと参入。東急は、東急パワーサプライという子会社を立ち上げ、電気・ガスの小売りも手がける。
そうした取り組みからもうかがえるように、東急は私鉄の中でも再生可能エネルギー導入に熱心な私鉄として知られる。東急は2019年3月から世田谷線で供給される電力をすべて再生可能エネルギーで賄うようにした。
世田谷線は路面電車のため、東急が運行する他路線よりも必要な電力量が少ない。それが、再生可能エネルギーへの切り替えることができた要因でもあった。
しかし、東急は世田谷線を再生可能エネルギー100%にしただけで満足しなかった。以降も環境対応を進め、2022年4月からは全7路線を再生可能エネルギー100%に切り替えている。
東急以外にも、東京メトロも再生可能エネルギーの導入に積極的になっている鉄道会社として知られる。東京メトロは、2008(平成20)年に千代田線の北綾瀬駅に初めて太陽光発電のパネルを設置。それを皮切りに、東西線・日比谷線などの駅にも太陽光発電のパネルを設置していった。
東京メトロは、東京と千葉県・埼玉県の一部だけにしか路線を有しない。JRと比べればスケールメリットは働くにくい。しかも、路線の大半は地下を走っている。太陽光発電に取り組むには不向きな鉄道事業者でもある。
そうしたハンディはあるものの、社会全体が環境意識を高めていることもあり、東京メトロは各駅でも再生可能エネルギーの導入、切り替えを進める。