横浜市営バス「給与引き下げ」は正しかったのか?――「平均780万円」は高すぎ? 公営交通バッシングの代償を考える

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路線バス業界で深刻化する「2024年問題」。千葉では1日50便減便、全国的なドライバー不足も背景に、横浜・大阪の公営給与引き下げが長期的な人材流出を招いた現状が明らかになった。

ドライバー不足と減便危機

横浜市営バス(画像:写真AC)
横浜市営バス(画像:写真AC)

 2025年に入っても、路線バス業界の「2024年問題」は各地で深刻化している。2024年問題とは、ドライバーの働き方改革にともない、残業時間の上限規制や勤務間インターバルの導入で、従来の運行体制を維持できなくなるリスクを指す。全国で路線バスの大幅減便や廃止が相次ぎ、特に郊外都市部の生活者への影響が大きい。千葉県の小湊鉄道では、千葉駅~イオンタウンおゆみ野間で1日50便が減便される事例も報告されている。

 観光路線の箱根地区も例外ではない。インバウンド需要の高まりにもかかわらず、伊豆箱根鉄道や箱根登山鉄道は路線バスの増便ができない状況だ。背景にはドライバー不足がある。コロナ禍で離職が相次ぎ、人手不足が全国的な問題になった。さらに2024年4月からは、ドライバーの残業上限が年960時間に制限され、出勤から退勤までのインターバルは最短9時間、推奨11時間とされた。従来の体制では運行数を維持できず、ドライバー確保は一層困難になっている。

 ドライバー確保には給与水準の引き上げが欠かせない。しかし、総じて給与は低く抑えられてきた。こうした状況のなか、2012(平成24)年に実施された

「横浜市営バス職員の給与引き下げ」

が、再びSNS上で話題になっている。長引く景気後退にともない、

「税金の無駄遣い」
「公務員給与が高すぎる」

との批判が高まったことが背景にある。

 横浜市は2006年12月、市の補助金に頼らない独立的運営を目指す「改善型公営企業」を掲げた。そして2012年に給与引き下げを実施した。この判断は、

・路線維持
・人材確保

に少なからず影響を与えてきたと、今になって指摘されている。過去の公営企業の経営判断が、現在のドライバー不足や路線減便にどのように作用しているのか、改めて検証が求められる。

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