全7路線を再生可能エネルギーに切り替え! 「東急」から学ぶ鉄道企業による環境対応の未来とは

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鉄道施設で進む環境対応。その最前線について筆者が解説する。

カーボンニュートラルに熱心な自動車業界

環境性能を向上させた2020系(画像:東急)
環境性能を向上させた2020系(画像:東急)

 菅義偉前首相は、温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにするとの方針を表明していた。これら一連の政策は、政界だけではなく経済界・学界などにも浸透。カーボンニュートラルとして、広く取り組まれている。

 特にカーボンニュートラルに熱心なのが、自動車業界だ。これまでの自動車は、ガソリンや軽油を大量に消費する。それだけでも環境に大きな負荷をもたらしていたが、排ガスによる大気汚染といった問題も生じていた。時代とともに環境への負荷は軽減されているが、各自動車メーカーは現在進行形で環境対応に取り組む。

 一方、鉄道業界は高度経済成長期から現在にかけて石炭を動力源とする蒸気機関車、軽油を燃料とする気動車などから電車へのシフトしていった。こうした動力近代化は、環境を意識したものではなかったが、期せずして自動車業界よりも環境対応は一歩先を行くことにつながった。

 動力近代化により鉄道は環境に優しい乗り物となったが、鉄道事業者は電車を動かすだけではなく、駅などでも大量の電力を消費している。それらで使用される電気が石炭火力・石油火力で発電されていたら、鉄道事業者がどんなに環境対応を進めても効果は限定的になってしまう。

 鉄道事業者は消費する電力のグリーン化へとシフトするとともに、自給する取り組みを始める。鉄道事業者が電力を自給することに傾注するようになるのは環境問題を意識してのことだが、それ以前からJR東日本は電力自給に取り組んでいた。JR東日本は信濃川流域に複数の発電所を有し、これらは総称して信濃川発電所と呼ばれる。

 信濃川発電所が供用を開始したのは、戦前期にまでさかのぼる。当時、JR東日本は存在しない。鉄道省という国家機関が鉄道を所管し、発電所も鉄道省により管理・運営されていた。

 信濃川発電所はそれらを受け継いだもので、信濃川発電所はその後も設備を増強。現在は、JR東日本が消費する電力の約4分の1を賄うほどの発電能力を有している。

 しかし、JR東日本は使用電力すべてを自給できているわけではない。多くは東京電力から供給されている。東京電力は首都圏を供給エリアにしているが、東電は供給エリア外の福島県や新潟県などにも発電所を有している。

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