「中国なしでは走れない」米国が認めた日――フォードCEOが踏み切った、歴史を逆転させてでも中国資本を招き入れる「生存への執念」
米国で新車平均価格が5万326ドルに達するなか、トランプ政権は中国資本との合弁で低価格車供給を模索する。4月の米中首脳会談が、市場と産業構造の大転換を左右する。
安全保障と実利

中国製EVに対しては、車載通信機能を巡る安全保障上のリスクが常に議論されてきた。合弁事業で米国側が資本の過半数を保有すれば、リスクは統制可能という理屈はある。しかし、ソフトウェアや通信基盤の深部に潜む脆弱性を軽視した政治的な弁明に過ぎず、資本比率に関わらず基幹システムの主導権を握る側が実効的な支配力を保つ状況は避けられない。
政治的な反発は必至で、それによる摩擦と中国資本を受け入れることで得られる車両価格の低減を秤にかける難しい判断が求められる。安全保障上の不安を、経済的利益のために許容する行為は、米国の国家戦略が防衛優先から、実利追求の危うい賭けに変化したことを示している。
4月に予定される米中首脳会談で、米国内での投資について両国が合意すれば象徴的な転換点となる。成立しなければ、トランプ政権は関税をさらに強化する可能性が高い。自動車分野が両国の交渉の交換条件となり、政治的取引の具として扱われる構図が鮮明になる。
この会談は、軍事や政治面での緊張を維持したまま、経済分野で限定的に相互依存を継続させる高度な外交交渉の場となる。合意が成立すれば、両国にとって妥協というより、米国市場が抱えるインフレという内部崩壊リスクを回避するための政治的決断を意味する。交渉が決裂すれば、米国は関税を極限まで引き上げるほかなく、自国市場の供給網を破壊し、消費者の離反を招く自壊的な事態を生む恐れがある。