「中国なしでは走れない」米国が認めた日――フォードCEOが踏み切った、歴史を逆転させてでも中国資本を招き入れる「生存への執念」
価格高騰の現実

自動車購入情報サイトを運営するケリー・ブルーブックによると、米国で販売される新車の平均価格は2025年9月に初めて5万ドルを突破し、12月には5万326ドルに達した。調査会社エドマンズ・ドット・コムの分析では、新車平均価格は2010年以降で61%も上昇している。
この15年間で米国民の平均所得も増えたが、車両価格の急騰には追いついていない。2025年末の時点で、平均的な世帯が新車を購入するには約9か月分の所得を投じる必要があった。大半の購入者は融資を利用しており、金利が総所有コストを押し上げる要因となっている。米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利引き上げを受け、60か月の自動車ローン平均金利は2022年から2024年にかけて2倍の8%に達し、2026年初頭でも約7%と高止まりしている。
新車購入者の構成は富裕層へ極端に偏り、年収7万5000ドル未満の層は事実上、市場から排除されている。かつて生活の基盤だった移動手段は、今や一部の層だけが享受できる高額商品へ変質した。手頃な2万ドルから3万ドル台の選択肢が消えた現実は社会的な不満を増幅させ、中国メーカーとの提携を容認せざるを得ない強い動機となっている。
フォード、GM、ステランティスの「デトロイトスリー」は、米国市場で需要が底堅いSUVやピックアップを中心にラインアップを展開し、車両の平均価格は5万4380ドルと業界平均を13%上回る。高収益な大型車へ偏重した結果、量販領域という市場の基盤を自ら放棄する失策を招いた。
対照的に中国勢は、国内の苛烈な競争を経て薄利多売の事業モデルを確立し、政府の補助金支援も受けながら、新車販売におけるEV比率を30%超に引き上げた。米国内で中国メーカーとの合弁が成立すれば、2万ドルから3万ドルの価格帯が中心となり、供給不足だった低価格市場が急速に活性化する。これは、収益性を追求するあまりデトロイトが切り捨てた大衆向け市場の主導権を、中国資本に全面的に譲渡する事態を招く可能性が高い。