「中国なしでは走れない」米国が認めた日――フォードCEOが踏み切った、歴史を逆転させてでも中国資本を招き入れる「生存への執念」

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米国で新車平均価格が5万326ドルに達するなか、トランプ政権は中国資本との合弁で低価格車供給を模索する。4月の米中首脳会談が、市場と産業構造の大転換を左右する。

フォードの生存戦略

フォードの新EVプラットフォームについて説明するDoug Field氏(Chief EV, Digital and Design Officer)(画像:フォード)
フォードの新EVプラットフォームについて説明するDoug Field氏(Chief EV, Digital and Design Officer)(画像:フォード)

 トランプ政権幹部と協議を重ねたとされるフォードの最高経営責任者は、中国勢を「存続に関わる脅威」と断言してきた。同社はこれまで、巨額の補助金で安価に製造された中国車が流入することから、米国市場を守る必要があると主張してきた。

 一方で、フォードは実利獲得のために積極的に動いている。BYDとのバッテリー供給拡大に向けた対話を続け、吉利汽車とは欧州での生産協力を模索している。2025年12月には、中国のバッテリー最大手CATLとライセンス契約を締結し、EV用セルから電力インフラ向け固定電源の製造まで協力範囲を広げた。

 こうした中国企業との距離の縮め方には、製造業としての誇りよりも、自社ブランドで中国技術を包み込み、市場に残るための現実的な生存戦略がある。フォードは中型電動ピックアップを含む新たな低価格EVシリーズを2027年から投入する計画で、中国勢が支配する価格帯との正面衝突を避けられない。

 自社の存立を脅かす相手の技術を取り込み、それを利用して同時に戦うという構造的矛盾の上で、現在のフォードの戦略は成り立っている。

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