「中国なしでは走れない」米国が認めた日――フォードCEOが踏み切った、歴史を逆転させてでも中国資本を招き入れる「生存への執念」

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米国で新車平均価格が5万326ドルに達するなか、トランプ政権は中国資本との合弁で低価格車供給を模索する。4月の米中首脳会談が、市場と産業構造の大転換を左右する。

関税と合弁の選択

フォード・ジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)(画像:フォード)
フォード・ジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)(画像:フォード)

 トランプ政権が推進する関税政策は、短期的には米国内の雇用や一定の生産規模を守る効果がある。しかし、輸入関税の上乗せ分はそのまま市場価格に転嫁され、家計を圧迫するインフレを加速させる。

 協議されている合弁事業の枠組みでは、工場が建設される地域での新規雇用創出が絶対条件となる。雇用や地域経済の維持を優先する点では、トランプ政権の米国ファースト政策の延長線上にあるが、低価格車の供給が実現すれば、車両価格の高止まりに苦しむ消費者からも支持を得られる可能性がある。

 一方で、中国資本の受け入れは部品供給網に深刻な影響を及ぼす。中国メーカーの進出は、圧倒的なコスト競争力を持つ中国系サプライヤーの流入を促し、供給網全体の中国依存度を高めて地政学的リスクを増大させる。米国内に巨大な工場という固定資産を抱え込ませることは、中国企業を米国の法体系や雇用構造のなかに実質的に縛り、相手側の行動を制限する役割も持つ。

 ゼネラルモーターズ(GM)が中国メーカーの参入に強硬に反対するのは、自社の非効率な生産体制が露呈し、既存の部品供給基盤が崩れる事態を懸念してのことだ。

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