「増税は勘弁」「負担増でも賛成」 交通税は“地方鉄道”を本当に守れるのか? 滋賀県の有識者会議諮問で考える

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地域交通の維持、充実を目標に滋賀県が導入を検討する交通税の制度設計案が、県の有識者会議に諮問されることになった。2025年度中に策定される滋賀地域交通計画の素案にも、財源として検討することが明記され、導入の是非をめぐる議論を本格化させそうだ。

甲賀市は路線維持に年1.5億円支出

甲賀市を走る信楽高原鉄道の気動車(画像:高田泰)
甲賀市を走る信楽高原鉄道の気動車(画像:高田泰)

 前面に「忍」の文字、側面に忍者のイラストが描かれた1両編成の気動車が、滋賀県甲賀(こうか)市の田園地帯を走る。丘陵地を下り、杣(そま)川を渡ると、終点の貴生(きぶ)川駅が見えてきた。甲賀市は信楽焼のたぬきと甲賀忍者で知られる県南部の街。気動車が走るのは、市の第三セクター・信楽高原鉄道が運行し、甲賀市内の信楽~貴生川間を結ぶ信楽線だ。

 貴生川駅は信楽線のほか、JR西日本の草津線、近江鉄道の本線(水口・蒲生野線)が発着する交通結節点。草津線で草津駅(草津市)へ出ればJR琵琶湖線、柘植駅(三重県伊賀市)へ進むとJR関西本線に接続している。近江鉄道は内陸ルートを通って彦根市や米原市へ鉄路が続く。

「昼間はどの路線も1時間に1~2本の運行だが、地域にとって大切な足。いつまでも残してほしい」

と、信楽線から草津線に乗り換え、京都市へ向かう高齢女性(74歳)。だが、貴生川駅乗り入れ路線のうち、輸送密度(1km当たりの1日平均乗車人員)が1万人を超すのは草津線の草津~貴生川間だけ。残りは3000人に満たない厳しい状態に陥っている。

 このうち、近江鉄道と信楽高原鉄道が維持できるのは、線路など施設を地方自治体が所有し、鉄道会社が運行に専念する上下分離方式を導入したからだ。甲賀市が投じる年間予算は信楽線だけで約1.5億円。人口約8万7000人、一般会計当初予算規模約460億円の小規模自治体にとって、軽い負担でない。

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