「JR東海とは話し合わない」 京都府市がリニア“大阪延伸”ルート巡り、ここまで強気に出られるワケ
ルート変更広告へのさまざまな反応

JR東海はリニア中央新幹線の大阪延伸に向け、奈良県と三重県で奈良ルートのボーリング調査を開始した。それでも京都府市はルート変更を求める活動を続けるという。「リニアを京都へ」――。京都市中京区の市営地下鉄京都市役所前駅。構内に掲示されたリニア中央新幹線のルート変更を求めるPR広告の前を乗降客が通り過ぎる。2015年から掲示しているもので、足を止めて見入る乗降客はほとんどいない。
乗降客に話を聞くと、
「京都を通らないルートだと、観光客が困るのでないか」
「経済効果を考えたら京都に来るべき」
と賛同の声がある一方、
「リニアが来たら余計に京都が混雑する」
「これ以上陳情しても時間の無駄」
など否定的な意見も聞かれた。
PR広告は京都府、京都市、京都商工会議所などがつくる京都府リニア中央新幹線推進協議会が作製した。名古屋市中村区のJR名古屋駅以西は奈良県奈良市付近を通って大阪市淀川区の新大阪駅へ向かうが、京都府を通る京都ルートへ見直しを求める内容だ。他の駅にも掲示され、機運を醸成しようとしている。
JR東海は環境アセスの「配慮書」作成

ところが、活動に水を差す出来事が起きた。JR東海が奈良市のJR平城山(ならやま)駅周辺など奈良県内3か所と三重県亀山市のJR井田川駅周辺など三重県内3か所で環境アセスメントに必要なボーリング調査に入ったことだ。
詳細なルート決定と駅位置の絞り込みに欠かせない作業で、京都府を通らない奈良ルート上に位置する。調査の完了時期は未定だが、結果を踏まえて環境アセスメントの第1段階に当たる「配慮書」の作成が進められる。JR東海は
「整備計画に基づき、準備を進めている」
と説明した。
奈良ルートでのリニア中央新幹線大阪延伸がさらに一歩進んだわけで、これまでと状況が大きく変わった。府市の要望が完全に否定され、京都ルートが入り込む余地がなくなったとみる声もある。
ところが、府市から断念の声は聞こえてこない。京都府交通政策課は
「まだ詳細なルートが確定したわけでない」
京都市リニア北陸新幹線誘致推進室は
「ボーリング調査で状況に変化があったとは思わない」
と反論した。