「増税は勘弁」「負担増でも賛成」 交通税は“地方鉄道”を本当に守れるのか? 滋賀県の有識者会議諮問で考える

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地域交通の維持、充実を目標に滋賀県が導入を検討する交通税の制度設計案が、県の有識者会議に諮問されることになった。2025年度中に策定される滋賀地域交通計画の素案にも、財源として検討することが明記され、導入の是非をめぐる議論を本格化させそうだ。

公共交通再投資の新たな財源

大津京駅に到着したJR湖西線の列車(画像:高田泰)
大津京駅に到着したJR湖西線の列車(画像:高田泰)

 滋賀県は長く人口増加を続けてきたが、ピークを過ぎ、県東部や北部、南部で人口減少が進みつつある。人口が減れば当然、税収に影響する。交通税最大のメリットは新たな財源の誕生で

「公共交通にさらなる投資が可能になる」

ことだ。

 しかし、県民の手取り収入が伸びないなか、高齢化社会の進行で社会負担が著しく増加して現役世代の暮らしを直撃している。公共交通の維持や充実に理解を示しても、過度の負担と反発する声が出るのは想定できる。

 交通税導入に反対する民間団体が動きだしたほか、県議会に懐疑的な声もある。

県民の反応は賛否両論

近江八幡市を走る近江鉄道の列車(画像:高田泰)
近江八幡市を走る近江鉄道の列車(画像:高田泰)

 県民の声を県東部の米原駅(米原市)と県西部の草津駅で聞いた。県東部は人口減少に陥り、地域の将来に不安を抱える住民が多い。北陸本線の列車を待つ長浜市の男性自営業者(61歳)が

「高齢になると公共交通が頼り。多少負担が増えても導入に賛成だ」

と話すように、米原駅では交通税に前向きな考えを示す声が目立った。

 これに対し、県西部は京都市や大阪市に通勤する新住民が多く、人口増加が続いている。京都市から草津市に転居してきたOL(29歳)が

「社会保険料の引き上げで生活に余裕がない。これ以上の増税は勘弁してほしい」

と不満を訴えるなど、草津駅では交通税に懐疑的な意見が多かった。

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