東南アジア最強のLCC「エアアジア」、なぜ日本で二度敗れたのか? そしてなお日本市場を狙う野望とは

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東南アジア最強のLCC、エアアジアは日本市場で二度の撤退を経験した。しかし親会社キャピタルAは400機以上の発注で拡大を再開。羽田・成田・関空など8空港で日本路線を強化し、インバウンドや北米直行便を狙う戦略が進む。

失敗要因3:新規利用層獲得の不親切設計

 エアアジアの問題は航空当局やパートナーだけではなかった。ユーザー向け施策も不親切であった。

 当時批判された施策のなかには、保安検査場までの通過時間が短いなど利用者側のミスと考えられるものもあったが、予約に関してはエアアジア・ジャパン側の失策であった。とりわけ旅行代理店向けの販売をせず、ウェブサイトの直接販売に絞ったことは致命的だった。

 エアアジア・ジャパンのターゲットは、航空会社を頻繁に使わず航空券購入に不慣れな層である。日本ではその層が航空券を購入する際、JTBやHISなどの旅行会社に頼ることが多い。にもかかわらずウェブのみの販売は、顧客行動にそぐわない施策であった。

 実際、第2期の破産時、チケット購入者の債権総額は5億2000万円で、そのうち直接購入は3億7100万円、代理店経由は1億5000万円と3割近くに上った。直接販売よりも代理店に頼る人が一定数いることを無視したのは非常にもったいない失敗である。

 さらにウェブサイト自体も使いにくかった。東京から国内線を予約しようとしても、表示されるのはマレーシアやタイの地名であった。当時でも東南アジア各地に路線網が広がっていたため、目的地を探すだけでも手間がかかった。

 第1期ではウェブサイト購入はクレジットカード限定であり、若者層には使いにくい設計であった。JCB調査によると、2012年の日本における20代のクレジットカード所有率は男性74.1%、女性77.2%で、5人に1人は持っていなかった。筆者自身も就航当時大学4年生でカードを持っておらず、オンラインで航空券を購入できず断念した経験がある。その後、コンビニ支払い可能なジェットスター・ジャパンで福岡に向かうことができたが、エアアジアに期待していただけに失望は大きかった。

 これらの施策ミスにより、エアアジアが掲げた「Now Everyone Can Fly」の精神は、日本市場では全く生かされなかった。

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