「もう新宿に用はない」 立川が今選ばれる理由! 「住みたい街ランキング」急上昇も、裏で迫る人口減! この人気は持続可能なのか
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立川市は、中央線のハブとして高い利便性を誇る。都市機能も充実しているが、少子化や高齢化の進展により人口構造が変化している。北口再開発や南口の生活文化の融合が進む中、持続可能な都市設計が求められる。特に、子育て世代や高齢者への支援強化が今後の重要な課題となる。
知を媒介する都市構造

ここで注目すべきは、立川がすでに有している「知の中枢機能」である。市内には、国立国語研究所、国文学研究資料館、国立極地研究所、統計数理研究所といった国の研究機関が集積しており、これは他都市にない圧倒的なアセットである。これらは教育都市や文化都市という既存の枠組みにも収まりきらない独自性を帯びている。つまり、立川には行政都市でも学園都市でもない、“思考の都市”としての潜在力が存在しているのだ。
現時点では、こうした知的施設群が市民や都市空間と十分につながっているとはいい難い。筆者(昼間たかし、ルポライター)は国文学研究資料館をよく訪れるが、来館者の多くは専門家や研究者であり、市民的な利用は限定的である。これは構造的な損失であり、立川の次の都市像を描くうえで重要な接続の欠落を意味している。
必要なのは、これらの研究機関を単なる施設”として扱うのではなく、都市そのものを思考と探求の場として再設計することである。例えば、研究者による市民向けのレクチャーや公開実験、資料展示などを市街地で実施することで、まちなかに問いの回路を埋め込む。これによって、都市の価値が単なる消費や快適さではなく、情報の創造と共有というプロセスに移行していく。
このような都市設計が実現すれば、立川は単なる郊外の利便都市とは一線を画す存在になる。例えば、近隣の武蔵野市や国立市が文化や文教のイメージで語られるのに対し、立川は知と探求の都市としてポジションを取ることができるだろう。
消費を前提とした都市構造から、探求と参加を軸とした都市構造へ。これは単なる理念ではなく、縮小時代の都市が生き残るための経済的合理性にもとづいた戦略である。