ローカル線に未来はあるのか!? 鹿児島・JR指宿枕崎線「輸送密度222人」という現実! 経営学者の私が「観光路線化」を強く提言するワケ

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指宿枕崎線は、鹿児島中央駅~枕崎駅間で年間12.09億円の収益を上げる一方、指宿~枕崎間は経営的に赤字が続く。地域活性化のカギは観光列車や駅周辺の医療・商業施設の開発で、公共交通の新たな価値創出が求められている。

「触媒効果」で鉄道の価値を再評価

指宿枕崎線とバスの運行経路。Mapion地図を加工し作成(画像:大塚良治)
指宿枕崎線とバスの運行経路。Mapion地図を加工し作成(画像:大塚良治)

 2024年8月19日、鹿児島県が事務局を務める「指宿枕崎線(指宿・枕崎間)の将来のあり方に関する検討会議」が開催された。JR九州は

「鉄道利用者のV字回復は難しく、このまま何も手を打たずにいると、将来、地域の足を確保する選択肢がなくなってしまうが、今であれば、打てる手がある」

と発言した。委員のひとりである呉工業高等専門学校の神田佑亮教授は、

「鉄道の価値は、移動の足としての効果だけで評価するのではなく、鉄道があることでその地域を訪問し、消費し、地域経済に貢献するという『波及効果』や、鉄道等の存在により、まちおこしや地域活性化ビジネスなどの熱が高まるという『触媒効果』などの観点から評価することも大事」

と指摘した。また、

「自治体のみではなく、地域の民間企業やNPO法人、地域おこし協力隊など、自発的に主体となって、鉄道の利用促進に取り組んでいる方々がとても多いことがこの地域の魅力だと思」

と述べた(第1回会議資料より)。

 沿線では指宿枕崎線活性化に取り組むキーマンがいる。中原水産の中原晋司社長は、線路や車両を持たない「ファブレス型」の鉄道事業者として、D&S列車(指宿のたまて箱、A列車で行こう、はやとの風)の貸切誘致やイベント列車の企画・運営・コンサルティング、指宿枕崎線を活用したモデルコース提案を行っている。中原氏は

「当社の鉄道事業は、ビジネスとして利益を上げている。これからも他地域の鉄道活性化に取り組む団体と連携を深め、当社として利益を確保しつつ、ローカル線の活性化に取り組みたい」

と語っている。

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