ウクライナ侵攻だけじゃない! 政治に翻弄される「交通政策」 実は日本国内にもあった

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ロシアのウクライナ侵攻により、日本と欧州を結ぶエアラインはロシア上空を回避するルート変更を余儀なくされた。このように、政治によって人々の交通網が影響を受ける例は、実は身近なところにもある。

首長選挙のたび「政争材料」に

各地で導入の議論が進むLRT(画像:森口将之)
各地で導入の議論が進むLRT(画像:森口将之)

 実際にはこのうち宇都宮市の負担は206億円だったが、一方の富山港線の場合は、富山市の支出はわずか10億円だった。線路のほとんどはJR西日本時代からあったし、北陸新幹線建設に伴う富山駅周辺の連続立体交差化事業の補助金などを活用したことも大きかった。

 しかも2016年の市長選では、整備費用は1000億円に膨らみ、その全てを市の税金でまかなうことになるという対立候補の“主張”を真に受ける市民が多く、僅差での勝利になった。

 佐藤市長は結果を踏まえ、市民理解を深めることに力を入れると表明し、開業時期は白紙とした。たしかにその後、市民向けプロモーションは活発になった。

そして2018年に入ると工事が始まるなど、LRTがリアルになったことで市民の注目が高まっていく。よって2020年の市長選は前回より差を広げての当選となった。

 LRTが議論されてきたのは宇都宮市だけではない。

たとえば筆者が2022年2月に経営者向けセミナーを担当した石川県金沢市では、JR西日本・IRいしかわ鉄道・北陸鉄道が乗り入れる金沢駅、繁華街の香林坊や近江町市場、金沢港が離れており、これらを直結する新しい交通システムの検討が続いていた。

 ここではLRTのほかBRT(バス高速輸送システム)が考えられていたが、当時の地元の話によれば、県知事・市長ともに乗り気ではないとのことだった。