「ロシアにはもう行かない」 各国コンテナ船が相次いで航路を停止、混乱はいつまで続くのか?
相次いで停止するロシア向けサービス
国際貿易において、海運は欠かせない存在となっている。シェア率は重量ベースで約9割と圧倒的。金額ベースでは航空輸送の割合が増えるが、それでも7割程度を海運が握る。
特に日本は貿易量の99.6%を海上輸送が占めており、私たちがアマゾンの商品を手軽に購入し、スーパーマーケットで海外産の食品を買い、安定的に供給される電気を使ってインターネットができるのは、商船が物資やエネルギー資源を運んできているからだ。
こうした海上物流を手掛ける船会社が
「モノを運ばない」
と宣言する事態が今、起きている。
2022年2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻した。これを受けて欧州連合(EU)加盟国や米国など西側諸国がロシアに対する経済制裁の強化に動くなか、中国のCOSCOを除く大手コンテナ船社8社がロシア向けのサービスを相次いで停止している。
コンテナの経由地であるオランダ・ロッテルダム港やベルギー・アントワープ港では税関当局がロシア行きコンテナの検査を強化。ドイツ・ハンブルク港ではコンテナターミナル運営会社のHHLAとユーロゲートが、ロシア発着コンテナの取り扱いを中止した。英国もロシア船籍や関係する船舶の入港を禁止した。
船会社のロシア離れ
デンマークに本拠地を置く世界最大規模のコンテナ船社APモラー・マースク(A.P. Moller ? Maersk A/S)は3月1日、ロシア発着の海上、航空、鉄道における新規ブッキングを停止すると発表した。スイス船社MSCも同日、バルト海、黒海、極東ロシアを対象に、ロシア発着のすべてのブッキングを一時的に停止することを決定している。
マースクはEUと英国の税関当局が、自国のコンテナターミナルや港を通過するロシア発着の全貨物を検査し、制裁対象の貨物や制限貨物を特定していると説明。すべての貨物が遅延し、すでに混雑している積み替えのハブがさらに圧迫されるなど、間接的な影響も出てきていると説明している。
同社は当初、食料品、医療品、人道的物資に限って受け入れていたものの、積み替えを含むロシア発着の貨物の取り扱いを中止するよう通告されるケースが増加し、オペレーション上の制約からサンクトペテルブルク、カリーニングラード、ノボロシースク発着のマースク便の新規予約を止めている。
独船社のハパックロイドと仏船社のCMA-CGMは、例外なくロシアとベラルーシ向けのブッキングを停止している。