ウクライナ侵攻だけじゃない! 政治に翻弄される「交通政策」 実は日本国内にもあった
ロシアのウクライナ侵攻により、日本と欧州を結ぶエアラインはロシア上空を回避するルート変更を余儀なくされた。このように、政治によって人々の交通網が影響を受ける例は、実は身近なところにもある。
宇都宮のLRTは なぜ30年を要したか

ここまで時間を要したのは、2000年の栃木県知事選挙で、新交通導入に反対する候補が当選し、計画が凍結されたことが大きい。再び動き出したのは4年後、福田富一県知事、佐藤栄一市長という現体制になって以降であり、2007年に市の主導で調査が再開された。
この間、宇都宮市に先駆けて国内初の本格的LRTを開業させたのが富山市だ。当時市長を務めていた森雅志氏の主導で、存続が議論されていたJR西日本富山港線のLRT化を2003年に決定すると、わずか3年後に開業させた。
追い掛ける立場になった宇都宮市は、2012年度に東西基幹公共交通実現に向けた基本方針を策定し、LRT導入がふさわしいと結論づけると、同年の市長選でLRT導入を掲げた佐藤市長が大差で3度目の当選を果たした。
市では翌年度、JR東日本宇都宮駅より東側を優先的に整備することなどを決めた。工事開始は2016年度、開業は2019年12月という予定だった。
ところがこの頃から、LRT反対の声が目立つようになった。最大の理由は膨大な整備費用だった。市長選直前にはJR駅西側を含めて約383億円だったのが、JR駅東側だけで約458億円に増大していたのだ。