国民は「JR」から鉄道を取り戻すべき? コロナ禍で浮き彫りになった国鉄民営化の功罪! 自治体「発言権強化」の必要性を考える
鉄道ダイヤ改正やサービスの変化は、コロナ禍を経て地域経済に深く関わる課題が浮き彫りになり、自治体との連携強化が求められている。民営化された鉄道事業は、利益重視から地域密着型への転換が必要で、京葉線の通勤快速廃止問題など、住民生活に対する柔軟かつ迅速な対応が重要となっている。
停車要望の一方的押し付け問題
交通行政においては、道路や土木計画の専門家が鉄道行政を担当することが多いが、鉄道の本質的な議論ができる専門家はあまり多くないのが現状だ。これが、自治体が鉄道に関する情報の非対称性を抱え、発言力が低下してしまう一因になっていると考えられる。
そのため、地域全体のグランドデザインを描き、鉄道事業者と十分に意見交換をすることが難しく、一方的な要望が押し付けられる場面が見受けられる。例えば、2023年春に発生した東海道線の快速アクティー廃止という出来事が、その典型的な例だ。
神奈川県鉄道輸送力増強促進会議という団体をご存じだろうか。この団体は、行政が関わり、県内の各市町村からの鉄道事業者への要望を取りまとめる活動をしている。例えば、この団体は、快速アクティーの通過駅である辻堂、大磯、二宮、鴨宮の自治体からの停車要望をそのまま鉄道事業者に送るリストを作成していた。
この対応に対して、JRは緩急接続などで通過駅の速達性を改善する措置を講じたが、県側がもう少し深く考え、要望を整理して提案すべきだったように思える。しかし、県は停車要望を引き続き行い、その結果、2023年春のダイヤ改正で、すべての列車が普通列車に変更されることとなった。
このような事例を踏まえ、各都道府県の担当者は、利便性向上のための方法を研究し、県全体でバランスの取れた輸送体系を議論し、最適な提案をJRに行うための力を養っていくことが重要だろう。