国民は「JR」から鉄道を取り戻すべき? コロナ禍で浮き彫りになった国鉄民営化の功罪! 自治体「発言権強化」の必要性を考える

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鉄道ダイヤ改正やサービスの変化は、コロナ禍を経て地域経済に深く関わる課題が浮き彫りになり、自治体との連携強化が求められている。民営化された鉄道事業は、利益重視から地域密着型への転換が必要で、京葉線の通勤快速廃止問題など、住民生活に対する柔軟かつ迅速な対応が重要となっている。

鉄道利用者負担で生まれる新財源

 整備新幹線事業について、国策として進められているものの、全ての沿線自治体が納得しないと進まない仕組みには、見直しを検討する時期が来ているかもしれない。この課題に対する解決策として、少なくとも以下の三つの方針を考える余地があるだろう。

 まず、利用者負担による線路特定財源の創設を考えてみるべきだ。新幹線や都市鉄道の整備が遅れている理由のひとつに、道路のように利用者負担の仕組みがないことがあると指摘されることがある。道路には自動車重量税など、国民に受け入れられている特定財源があるのに対し、鉄道には同様の仕組みがない。鉄道にもユニバーサルサービス料金(鉄道受益者負担金)を導入し、例えば全国の鉄道運賃料金の10%を適用すれば、年間で8000億円の線路特定財源を生み出す可能性がある。このような財源を活用すれば、新幹線予算を増やすことができ、地域の足を守るための補助も充実させることができるだろう。

 次に、新幹線本線と車両基地の費用は、原則として国家負担とする方向性が考えられる。与党整備委員長の西田昌司参議院議員も主張しているように、国策として進める事業である以上、本線、起終点駅、車両基地、そして駅の待避設備部分の費用は国が負担すべきだと考える。途中駅建設費については自治体負担とし、車両についてはJRが負担する形で役割分担を明確にすることが望ましい。こうした制度にすることで、自治体間の利害関係によって整備が停滞することを防げる可能性がある。そのためには、前述の線路特定財源を活用し、年間5000億円以上の予算を投入し、整備スピードの向上を期待することができるだろう。

 最後に、新幹線基本計画線ルートの見直しも検討するべきかもしれない。近年、都市の発展状況や人口分布は1970年代とは大きく異なってきているが、50年前の計画がそのままになっているのはやや不自然に感じられる。例えば、東九州新幹線のルートについて、大分県や宮崎県が独自にルートを検討し始めている。また、新幹線が開通することによって発展した都市同士を繋げることも、今後の課題として考えられるだろう。例えば、新潟~仙台間を直結する新幹線がないことが不便だと感じることがあるため、このような路線の追加についても議論されるべきだ。また、既存線区の整備効果を高めるために、特に効果が高い線区を優先して着工することも有益だろう。たとえば、羽越新幹線の上越妙高~長岡間を優先的に着工すれば、大阪から直通で新潟に行けるようになる可能性がある。さらに、山形新幹線の福島~米沢間についても、峠越えの新トンネル計画があるなら、フル規格への先行格上げを検討する余地があるだろう。

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