「乗らないなら廃止」赤字ローカル線問題、「正論」だけで解決するなら誰も苦労しない! 地方消滅を防ぐ現実的解決策とは
地方鉄道の存廃問題が深刻化する中、「赤字路線は廃止すべき」という単純な議論では解決できない現実が浮き彫りに。高齢化社会の影響や地域経済への打撃を考慮した、持続可能な鉄道活用策を求める議論が急務だ。
合理性至上主義がもたらす社会の硬直化
ルポライターの昼間たかし氏が当媒体で「「赤字だから仕方ない」 そんな“ローカル線廃止論者”に、私が1ミリも同意できないワケ」(2025年1月5日配信)という記事でマックス・ウェーバーに触れていたが、筆者も改めて、「正論」すなわち剥き出しの合理性の危険性について書くことにする。
問題の本質は、鉄道の存廃を単なる収支計算や効率性の尺度だけで判断する思考の枠組みにある。このような思考は、近代社会学の創始者のひとりであるドイツのマックス・ウェーバー(1864~1920年)が指摘した「鉄の檻(Iron cage)」の概念と深く関係している。
ウェーバーは、近代社会が合理性を極限まで追求することで、人々が機械的なシステムのなかに閉じ込められ、社会の柔軟性や創造性が損なわれる危険性があることを指摘した。ローカル線の議論も、まさにこの「鉄の檻」のなかで展開されている。
「鉄の檻」理論に照らせば、これは極めて危険な状況である。合理性の追求が社会の決定プロセスを支配すると、本来あるべき柔軟な議論が阻害され、システムそのものが硬直化してしまう。例えば、
「コストカットを徹底すれば企業は成長する」
という考え方が極端に進むと、従業員の幸福や企業文化の維持といった非数値的な価値が切り捨てられてしまう。同じように、「鉄道は採算が取れなければ廃止すべき」という論理が支配的になると、地域社会の持続可能性や公共交通の意義といった重要な視点が見落とされることになる。