インドのビール王が築いた「キングフィッシャー航空」はなぜ破綻したのか? 設立6年でシェア20%獲得も、まさかの「給料未払い」に陥った理由とは?

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キングフィッシャー航空の興亡は、急成長と破綻の教訓を示す壮大な物語だ。設立から6年で20%の市場シェアを獲得したものの、過度な投資と不適切な経営により、2012年に運行を停止することになった。この事例は、ビジネスにおけるリスクと顧客ニーズの重要性を再認識させるものとなった。

インド航空業界への教訓

エアバスA340-500型機キングフィッシャー。2006年に6機が発注され、バンガロールからサンフランシスコへのノンストップ便として2008年に納入される予定だったが、5機が製造された後にキャンセルされた(画像:Laurent ERRERA)
エアバスA340-500型機キングフィッシャー。2006年に6機が発注され、バンガロールからサンフランシスコへのノンストップ便として2008年に納入される予定だったが、5機が製造された後にキャンセルされた(画像:Laurent ERRERA)

 インドの成功者が経営していたキングフィッシャー航空は、成長の過程で無理な投資を行い、従業員に給料を支払わないままリース機を飛ばせない状態にするなど、経営陣であるマリヤ氏をはじめとする責任は重い。新興航空会社にありがちな経営の失敗パターンだ。

 また、キングフィッシャー航空の戦略は、快適さばかりを追求した結果、インドのマスマーケットが求める安さと正確性には応えられなかった。同社の戦略を日本の感覚で例えると、東海道新幹線「のぞみ」を全列車・全席グリーン車以上で運行するようなもので、顧客ニーズに合わないものを追求したため、運営コストが増加する一方だった。

 さらに、国内での競争が激しく安定しにくい状況にもかかわらず、インド政府は航空会社に対して厳しい規制や公租公課の仕組みを放置していた。キングフィッシャー航空の経営破綻は大きなインパクトをもたらし、これを受けてインド政府は規制改革を実施した。国営会社からしか購入できなかった燃料の購入規制は撤廃され、国際線参入の条件や外資の参入も一部緩和された。

 しかし、その後もインドの航空業界は政府の厳しすぎる規制や国内市場の激しさに苦しんでいる。高い潜在成長性があるにもかかわらず、多くの会社が困難な状況に陥っている。代表的な事例については後の記事で触れたい。

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