地方でよく見る? 閉店したサービスステーションが「そのままの姿」で放置されている理由

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経営状態が良いにもかかわらず、サービスステーションの廃業が続出している。経営状態を冷静に分析し、早期に廃業するよう指導すべきだ。

廃業が大きな課題に

廃サービスステーションのイメージ(画像:写真AC)
廃サービスステーションのイメージ(画像:写真AC)

 2021年末からガソリン価格が高騰し、国民から注目を集めるサービスステーション(SS)。SS運営業者は今、仕入価格の高騰をどう価格転嫁するか、需要の減少にどう対応するか、などさまざまな課題に直面している。

 筆者(日沖健、経営コンサルタント)は、2021年から2022年5月にかけて全国8人のSS運営業者にインタビュー取材した。8人中5人が最大の経営課題として

「いかに円滑に廃業するか」

を挙げていた。SS運営業者の間で廃業が大きな課題になっているようだ。

 ということで今回は、インタビューの結果も踏まえて、SSの廃業というテーマについて考えてみよう。

経営状態は改善

1企業あたりの年間総販売数量の推移(画像:全国石油協会)
1企業あたりの年間総販売数量の推移(画像:全国石油協会)

 まず、SS運営業者の間で廃業が課題になっている背景・理由を確認しよう。

 資源エネルギー庁によると、全国のSS数は1994(平成6)年末の60421をピークに減り続け、2021年末には29005と半分以下に激減している。事業者数も13314と、平成以降の最少を更新し続けている。異業種への事業転換なども一部にあるだろうが、廃業が相当数あることは確実だ。

 一般に廃業というと、経営状態が悪化してやむなく事業継続を断念するケースを思い浮かべる。SS運営業者の経営状態は、どうだろうか。

 全国石油協会のSS経営実態調査(2021年度)によると、全国のSSのうち経常利益ベースで赤字の業者は12.5%にすぎない。一方、全国の法人の65.4%が赤字だという(国税庁2021年統計)。SSの経営状態の良さが際立っている。

 ガソリンなど揮発油の需要は、

・人口減少
・車離れ
・燃費向上
・エネルギー転換

などで減少傾向にある。ところが、SS経営実態調査によると1社当たりの販売数量は年5996kLで、5年前の2015年の4488kLから33.6%も増えている。

 つまり、市場全体の需要は減っているが、それ以上の勢いで廃業する業者が続出し、残った業者に需要が集中している。また競争圧力が減り、市況が安定する。そのため、残ったSS運営業者の収益性が改善しているわけだ。

「2000年より以前は価格競争に明け暮れていて、当社も赤字続きでした。しかし商圏の他業者が次々と廃業し、値引き合戦はなくなり、市況が安定しました。以前よりもマージンを取れるようになり、販売数量も増え、利益水準はこのところ年々改善しています」(近畿地方の業者)

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