インドのビール王が築いた「キングフィッシャー航空」はなぜ破綻したのか? 設立6年でシェア20%獲得も、まさかの「給料未払い」に陥った理由とは?
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キングフィッシャー航空の興亡は、急成長と破綻の教訓を示す壮大な物語だ。設立から6年で20%の市場シェアを獲得したものの、過度な投資と不適切な経営により、2012年に運行を停止することになった。この事例は、ビジネスにおけるリスクと顧客ニーズの重要性を再認識させるものとなった。
高コスト戦略が招いた航空会社の苦境
キングフィッシャー航空は、運行初年度から赤字が続いていた。
航空会社は初期投資が大きいため、設立から1、2年の赤字は仕方がない面もあるが、同社は3年目の2007年に経営不振のLCCであるエアデカンを買収したことで、さらに業績が悪化してしまった。エアデカンの主力機材は短距離用のATRシリーズで、キングフィッシャーが提供していた高水準のサービスには向かず、シナジー効果が薄かったといえる。
ATRシリーズは子会社のLCC、キングフィッシャー・レッドが運行していたが、もともと赤字だったところに整備コストのかかる機材が増えたことで、財務的な負担は大きくなった。また、高水準のサービスを売りにしていたキングフィッシャーがLCCのエアデカンと合併したことで、ブランドイメージが低下し、結果的に会社全体の価値が落ちてしまった。
さらに、キングフィッシャー航空のサービスは一部の富裕層には評価されていたものの、インドの多くの旅客は正確さや安さを求めており、彼らには魅力的に映らなかった。
また、同業他社に比べて従業員の賃金が高く、メンテナンスコストも大きかったため、運営コストがかさむ状況にあった。これに加えて、当時のルピー安による燃料費の高騰も重なり、経営は一層厳しくなっていった。