インドのビール王が築いた「キングフィッシャー航空」はなぜ破綻したのか? 設立6年でシェア20%獲得も、まさかの「給料未払い」に陥った理由とは?

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キングフィッシャー航空の興亡は、急成長と破綻の教訓を示す壮大な物語だ。設立から6年で20%の市場シェアを獲得したものの、過度な投資と不適切な経営により、2012年に運行を停止することになった。この事例は、ビジネスにおけるリスクと顧客ニーズの重要性を再認識させるものとなった。

免許剥奪で終焉を迎えた7年間の闘い

キングフィッシャー航空の国内線エコノミークラス機内食(画像:Sumeet Mulani)
キングフィッシャー航空の国内線エコノミークラス機内食(画像:Sumeet Mulani)

 2009年から2011年にかけて、キングフィッシャー航空は市場シェアで1位だったにもかかわらず、3年連続で100億ルピーもの損失を出していた。2010年以降、エアバスからの新機材導入が延期され、国際線の廃止など本格的なリストラに踏み切った。2011年には増資を繰り返して債務を削減し、経営危機を乗り切ろうとしたが、状況は好転しなかった。

 2012年には累積損失が700億ルピーに達し、4月には市場シェアが過去最低の13%まで落ち込んだ。経営危機はさらに深刻化し、従業員への給料未払いが発生。2011年10月には一部の従業員がストライキを行い、会社側が従業員を締め出すことで交渉が長期化し、全路線が運休する事態に陥った。

 2012年2月には、保有する64機のうち22機しか運航できない状態になり、リース料の支払いも滞り、リース会社にも大きな損失を与えてしまった。マリヤ氏は運行継続のため政府に支援を求めたが、結局かなわず、同年12月20日にインドの航空当局から免許を剥奪され、キングフィッシャー航空はわずか7年で幕を閉じた。

 これにより、インドの航空会社として初めて予定されていたワンワールドへの加盟も実現しなかった。さらに、破綻後もリース機材の返却は行われず、重要なパーツが外されたため、飛行できない状態になっていることが判明。途上国や新興国への機材貸し出しにおける大きな教訓を残すケースとなった。

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