ルート案内だけじゃもう古い! いま問われる「カーナビ」の在り方、発想の転換が求められるこれだけの理由
車載機器として定着したカーナビだが、その可能性は十分尽くされているとはいいがたい。ここでは、カーナビの今後の可能性について考えていくことにしたい。
カーナビ利用が伸びなかったワケ

それではなぜ、カーナビの利用はそれほど伸びなかったのだろうか。
ETCに比べて機器が高価であることに加え、より大きな原因としては、有料道路の料金割引など確実なメリットがあるETCに比べて、必要性がそれほど強く感じられないこともあるだろう。
図のような実測のデータによれば、日本での個人による自動車の利用距離(トリップ長)はその4割が5km以内の近距離帯で占められており、近年はその比率が増加しているという(2015年国土交通省自動車起終点調査より)。
なるほど、自動車の利用範囲の多くを近距離が占めるのであれば、日ごろ慣れた道を走るなかで、特にカーナビを必要とする機会もそれほど多くはないともいえる。
自動車利用に関する世界的動向

以上に対して、あらためてカーナビの持つ可能性について考えるために、ここで近年の自動車利用に関する、ある世界的な動向に注目したい。
それは「カーフリー」と呼ばれる、都市中心部への自動車乗り入れを制限する動きである。ヨーロッパなどでは渋滞や環境問題の対策としてすでに多くの都市で導入され、公共交通機関の利用促進や自転車専用道路の整備などと連動した効果を上げている。
筆者(是永論、社会学者)も以前に英国のマンチェスターに在住していた際、市街中心部の自動車乗り入れが大きく制限されている一方で、市内に整備されていた高速の路面電車と無料の市内循環バスによる、スムーズな移動のメリットを体験できた。