なんと総勢600両 台湾鉄路“初モノ”だらけの特急電車 「EMU3000型」の詳細に迫る

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台湾鉄路管理局の新型車両のひとつが、日立製作所が製造した特急電車「EMU3000型」だ。果たしてどんな車両なのか。

第一印象「台鉄っぽくない」

停車するEMU3000型。高雄駅。白と黒のツートンカラーから現地メディア等は「企鵝号」(ペンギン号)と呼ぶことも(画像:若杉優貴)
停車するEMU3000型。高雄駅。白と黒のツートンカラーから現地メディア等は「企鵝号」(ペンギン号)と呼ぶことも(画像:若杉優貴)

 筆者(若杉優貴、商業地理学者)が乗車したのは台湾南部の拠点駅「高雄」から、日本人移民村だった台東県の「鹿野」まで。乗車時間約2時間強の旅路だ。

 高雄駅に滑り込んだEMU3000型を見て最初に受けた印象は「台鉄っぽくない」。台鉄は新型車両の導入を前に「台鉄美学ルネサンス(台鐵美學復興)」と題したプロジェクトを立ち上げており、「サイレントフロー」をテーマにこれまでの台鉄車両とは一線を画した白と黒を基調とする落ち着いたスタイリッシュなデザインを生み出した。

 先頭車の顔つきは、同じく日立製作所が製造した英国鉄道の「クラス800」に似ている。車体はクラス800やJR東日本E257系(特急「踊り子」「湘南」など)、JR九州885系(特急「白いソニック」など)と同じく、日立製作所の次世代アルミニウム車両「A-train」の技術によるもの。

 台鉄ではJR九州885系の姉妹電車であるTEMU1000型(太魯閣号)に続く2形式目となった。なお、EMU3000型はTEMU1000型(太魯閣号)・TEMU2000型(普悠瑪号)とは異なり振子式や車体傾斜式を採用していない。

 昨今の日本の在来線特急ではなかなか見られない、「1編成12両」という長大編成は圧巻だ。

 側面の車体上端には色帯があしらわれている。この色帯は編成によって赤、緑、青、そして赤・緑・青・黄の4色をまとった観光対応型の特別仕様車(後述)の合計4種類ある。これらの色はそれぞれ

・赤:情熱
・緑:静謐(静かで穏やか)
・青:知性
・黄:豊饒(豊作)

を表しているという。

 乗降口の横にはピクトグラムが配されており、方向幕はフルカラー発光ダイオード(LED)が採用された。このフルカラーLED方向幕も自強号では初登場となった。乗降口はノンステップ構造。従来の台鉄特急はホームと車両の段差が大きく、またステップがある車両が多かったが、TEMU2000型からはノンステップ構造を採用した。

 台鉄では近年改修・新設された駅は古い駅よりも少しホームが高くなっているほか、EMU3000型の導入と前後して一部の既存車両でも段差解消改造を行うなど無障礙(しょうがい)化(バリアフリー化)を進めており、誰もが利用しやすい環境が整いつつある。

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